10番との出会い 第6話
「おい!亮! 何黙ってるんだよ。」
「別に・・・」
亮はふてくされて答えた。
今日の試合の中で、どうしても納得できないプレーがあったのだ。
それは、決勝点のトゥーキックでのシュートのことだ。
キックといえば、インステップ・インサイド・アウトサイド・インフロントの4つのことで、トゥーキックは素人の蹴り方だと、亮は信じていた。
特にシュートに関しては、インステップで豪快に蹴り込むことが良いことだとかたくなに信じているのだ。
ましてや10番の選手ならなおさらである。
ワールドカップで大活躍をしたケンペスと同じようなドリブルを再現した仁が、なぜ最後の最後にトゥーキックでシュートを打ったのか、まったく理解できず、動揺していたのだ。
「別にってこと、ないだろ。」
稔がイライラし始めた。
「うるせ~な!!」
亮の声が大きくなった。
その声を聞き、仁が振り向き、近寄ってきた。
「亮、なんだ?稔とケンカでもしたのか?」
「・・・」
亮は黙りこくっている。
「仁君、亮がわけわからないんだよ。なんかひとりでイライラしちゃってさ・・・」
「亮、どうした?」
仁が問いかけると、亮は攻撃的な目を仁に向けた。
「なんでシュートを思い切り蹴らなかったの?」
「あ?」
「なんでトゥーキックなんかで決めたのさ」
「ああ、そのことか・・・」
仁には、亮がなぜイライラしていたのかがすぐに理解できた。
仁も、幼いころ同じようなことでイライラしていたことがあったからだ。
仁の父は、日本リーグの所属チームで10番を背負い、未だ現役で活躍している大石大介だ。
俊足FWとして名を馳せ、一時期は日本代表にも名を連ねた有名選手なのだが、仁も幼いころに見た、父が決めたトゥーキックのシュートに対し、同じようにからんだ時期があったのだ。
「なぁ、亮。サッカーはな、ラグビーと違って、1点は1点なんだ。そういうルールのスポーツなんだよ。1回ゴールネットを揺らすと、1点なのはわかるよな?」
「うん・・・」
「もしも、インステップが5点、インサイド3点、トゥーキックが1点なら、5点を狙うけどな。」
「・・・」
「サッカーはな、インステップの豪快なシュートも、トゥーキックのコロコロシュートも、同じ1点なんだ。」
「・・・」
「わかるか?」
「わかるよ・・・。けど・・・。」
仁の言っていることは頭では理解できる。
たしかにルールの上では、その通りである。
でも、憧れの仁には、シュートを豪快に決めてほしかったし、それが亮の考える10番を背負う選手の仕事だと信じているのだ。
「亮の想いはわかるよ。オレもそうだったからな。」
「え・・・?」
「10番の得点は、見た目も凄くないとダメだって思ってるんだろ?」
「・・・うん」
仁は、優しく微笑みながら、当時、父親が話してくれたことを、亮へと話し始めた。
