ジュニアサッカーメモリーズ~憧れのMF10 -3ページ目

10番との出会い 第5話

ディフェンダー二人を一瞬にして置き去りにした仁の目の前には、最後の砦、GKがいるのみだ。

GKは、腰を落とした低い姿勢で、仁との距離を一気に縮める。


 右か?左か?上か?それとも下か?


 距離、スピード、立ち位置、重心。


時間にするとコンマ数秒の間だろう。

仁の頭の中ではあらゆる仮説を立て、瞬時に最善の方法を探りだした。



「仁君、早く!」


グランドの外から、亮が叫んだ。


GKは、体を横倒しながら突っ込み、勢いを殺すことなく、シュートコースをブロックしながら、ボールを奪いに行く。

しかし、ボールを奪ったと思った瞬間、目の前のボールと仁の姿が消えていた。


仁は右足のつま先でボールをつつく、いわゆるトゥーキックでGKの右わき腹の下を抜き、衝突を避けるために、ふわりと宙を舞ったのである。


GKが素早く後ろを振り向くと、着地した仁の向こう側で、ゴールネットが揺れていた。


「やった!やったぜ!!」


グランドの外では、稔が興奮して、「やったぜ」という言葉を繰り返し叫んでいる。

応援している選手たちも、異様なほど盛り上がっている。


グランドでは、右手を高々と上げる仁の周りに、洋光イレブンの選手が駆け寄り、得点の喜びを爆発させていた。


「まだ終わっちゃいね~ぞ!!ラスト、しめていこうぜ!!」

味方ゴール前から、まるで怒っているかのような晃輝の声がグランドに響き渡った。

喜びに沸く洋光イレブンの気持ちを引き締めるために、あえてきつい口調で仲間を鼓舞した。


残り時間はほとんどない。

プレー再開のホイッスルがなり、相手プレーヤーがドリブルを仕掛けた瞬間、試合終了を告げる主審の笛が大きく鳴り響いた。


その瞬間、グランド内の洋光イレブンの選手は、ひと固まりとなり、喜びを爆発させた。

そして、その中心にいたのは、背番号10だった。



「亮!県大会優勝だぜ!」


「ああ・・・」


大興奮の稔とは裏腹に、亮の声は沈んでいる。


「亮?嬉しくないのか?」


「いや。嬉しいよ。けど・・・」


「けど?なんだよ?」


「・・・」


試合終了の合図とともに、喜びを爆発させている洋光イレブンの選手たちの中で、亮だけが静かに一点を見つめていた。

その視線の先には、仁がいた。



  第6話 に続く・・・



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