今月のブログは、連載形式での投稿をしていきます。
『自己を見失いながらも、哲学の思索を通して少しずつ自己理解を深めていく』
姿を描いていきます。
最後までお付き合いいただけたら幸いです。
主人公:加代子
正しくあろうと、正解を選びたいけど選べない葛藤の中で、
自分を否定したくなる気持ちを持っている。
『“わたし”に耳をすませる』
第29章:わからなさと共に、ある
「わたし……ほんとは、何がしたいんだろう?」
ふとした瞬間に、胸の奥から問いが立ち上がる。
深夜のリビング。家族が寝静まったあと。
まだ少し温もりの残るマグカップを両手で包みながら、加代子はぼんやりと空間を見つめていた。
「これでよかったのかな」
「このままでいいのかな」
「何が正解だったんだろう」
以前の加代子なら、そんな思いが浮かんだ時には、すぐに“答え”を探してしまっていた。
インターネットの検索窓に、感情を丸ごと打ち込んでみたり。
誰かのアドバイスにすがるように、「どうしたらいい?」と聞いてみたり。
でも、今は違う。
“わからない”という状態を、ただそのまま、少しの不安と、少しの穏やかさと一緒に、そばに置いておく。
それができるようになった。
***
職場の同僚・理子とのランチタイム。
ファミレスの柔らかな照明の下で、コーヒーの湯気越しに理子がぽつりと言った。
「……なんか最近、加代子さんって、“すぐには決めない”人になった気がする」
「決めない?」
「うん、良いとか悪いとか、白とか黒とか、前より保留してるっていうか。
それって、なんか……落ち着くんだよね。
“急かされない”っていうか、“一緒に考えられる”って感じ」
加代子は驚いた。
自分が「何かを決められない不安」を抱えていたつもりだったのに、
その“宙ぶらりん”の感覚が、誰かにとっては“安心”に感じられていた。
「理子……ありがとう。うれしい」
ふと、加代子の中で、かつて心の中に住み着いていた“こうでなければ”という声が静かにしぼんでいくのを感じた。
「答えが出ないことは、未解決じゃない。
そこにとどまり続けることもまた、“選び方”のひとつなんだ」
***
夜、リビングの照明を落としたあと、窓の外の暗がりを眺めながら、加代子は心の中で誰かに話しかけるように思う。
「わたしは、答えがほしくて、ずっともがいてた。
でも、本当は、“問いと一緒にいる”ことが、
“わたしと一緒にいる”ってことだったのかもしれない」
「なにが正しいか」ではなく、
「なにがいまのわたしに響いてくるか」
という軸で世界を見るようになってから、
過去の後悔も、自分の不器用さも、どこかやわらかくなった気がする。
いつか読んだ言葉が、静かに胸に降りてくる。
「完全な理解よりも、誠実な戸惑いを持ち続けることの方が、
本当はずっと人間らしいのかもしれない」
—— 哲学者・岸見一郎の言葉だっただろうか。
“わからない”という場所から始まる対話がある。
“はっきりしない”からこそ、見える景色がある。
加代子の中で、その曖昧さがようやく、自分自身と重なって見えはじめていた。
***
最近、子どもと一緒に本屋へ行くことが増えた。
「ママ、これ面白そうだよ!」
「ほんと? じゃあ一緒に読もうか」
子どもとの会話も、“正しさ”ではなく、“関心”を共有するようになっていた。
家族という小さな世界の中で、“共に考える”時間が増えていく。
たったそれだけのことが、以前の加代子にはできなかった。
今はただ、それが嬉しい。
「問いとは、
“こうあるべき”という場所から、
“こうあるかもしれない”という広がりへ、
自分を運んでくれる舟のようなものかもしれない」
問いに急かされず、答えを焦らず、
“わからなさ”と共に、今日を生きる。
そのこと自体が、
何よりも確かな歩みだった。
🔹次章予告:第30章「名前のない願いを、胸に」
加代子が“願い”を語れるようになる――
言葉にならないまま心にあった、名前のない願望が、
他者とのつながりの中で少しずつ形を帯びていく・・・
独り言・・・
「なにが正しいか」ではなく、
「なにがいまのわたしに響いてくるか」
言葉って本当に不思議
同じ言葉でも、自分がどうやって受け取るのか?次第で意味が変わってしまう。
相手が同じ言葉を同じ気持ちで投げかけてきたとしても、
いい意味で受け取れるときと
不快な意味で受け取れるときがある
結局何を言われるか?じゃないし
誰が言うのか?でもないのかもしれない
意味を持たせているのは、いつも自分自身。
好きな人に言われた言葉と、苦手な人に言われた言葉が違う意味を持つように・・・
私達はいつも『何が自分に響くのか?』で変わるのかもしれない。
どんな言葉も出来事も、時間や環境も、全ては相対的
自分次第で世界は変わる。
私の世界を変えられるのは、いつも私自身なんだ。
どうしたいのか?どうなりたいのか?自分が何を望んで願うのか?
が、分かれば何でも願いは叶えられるんだろう。
でもさ、それが分からないから立ち止まっている。











