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妄想最終処分場

好きなジャンルの二次創作ブログです。
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*禁:無断転載、二次加工、二次利用

10/19発売の本誌ACT205の続き妄想です


2ヶ月もあいてしまった上に、どんどん当初のテイストとずれて行ってしまう。

行きつく先が軽くなってしまってどうにも纏まりませんがこのままいきますー。








━─━─━─━─━─



ACT205妄想【23】



「魔法でも、夢でもないよ」


動きを止めたキョーコの手から、ころりと蒼い原石が転がり落ちる。蓮は自分の足元に転がってきた石と、キョーコの体の上に落ちたままだった対照的な桃色の雫も一緒に拾い上げた。


「現実なんだ。ちゃんと俺を見て。許されることじゃないけど、謝らせて?」


拾い上げた蒼い原石は朝日を浴びて菫色に輝き、桃色の雫と寄り添うように蓮の手の中に納まっている。蓮はその二つをごとキョーコの手を包み込んだ。


「コーンも、プリンセス・ローザも…君に持っていて欲しい。君の笑顔を願って俺が贈ったものだから」

「え…、あ…の……」


混乱から思考停止したキョーコに蓮は苦笑した。


「最上さん、夢じゃないんだ。…最初に夢に逃げ込んだのは俺の方だけど」


溢れた恋心と、触れた相手を欲することを止められなかったあの日、キョーコが苦しまないようにと熱に浮かされたあの時間を夢だと囁いたのは蓮の方だ。でもそれは、キョーコのためと言い訳しつつ現実を見れない自分への言い訳だった。


「敦賀…さん?」


最上さんと自分を呼ぶ声に呼応するようにキョーコの口から声が零れ落ちた。


「うん」

「コーン?」

「…うん。そうだよキョーコちゃん」


キョーコは自分の問いかけに両方とも頷いて答える相手に目を瞬かせた。


「…コーン…?…敦賀さん…?…目はコーンの色なのに、他は敦賀、さん…?あなた、誰?」


「…久遠」


蓮は一呼吸置いたのち、自分の本当の名を口にした。


「く、おん?」

「そう。俺の本当の名前。昔もそう名乗ったつもりだけど日本語のヘタだった俺の発音は幼い君の耳にコーンって聞こえてたんだよね」

「むかし?」

「この石を渡した時だよ。昔…京都の河原で。君は俺をコーンと呼んで、妖精だって信じてた」

「敦賀さんが……コーン…?」


ようやく繋がったらしいキョーコからの疑問に蓮は頷く。


「黙っててごめんね。この石を拾ったあの時から、俺は君がキョーコちゃんだって分かったのに、ここで自分の力で生きるために過去は持ち込まないって決めてたから打ち明けるつもりはなかったんだ。でも…」


一度区切り、一呼吸おいてから蓮の言葉は続いた。


「素の…久遠の姿で君と会ってしまって、コーンとして駆け寄ってきてくれたのが嬉しくて。でも君の叶わぬ恋を聞いて苦しくて…。君が欲しくてたまらなくて、過ちを犯した。ごめん…ごめん、最上さん。君をこんなにも苦しめて、謝って許しを請うことではないのはわかってる。でも…」


自らが贈った二つの石ごとキョーコの手を握りしめた蓮は懺悔するように顔を伏せた。


「止まらなかった。俺じゃない誰かを想っていても君に触れたら……」

「敦賀…さん…?」


敦賀さんと呼ばれ、蓮は罪悪感を振り切って顔を上げてキョーコを見つめた。


一番大切な言葉を伝えるために。


「最上さん、君が好きなんだ…。俺の過去や覚悟なんかより君を欲する気持ちを止められなくて、大切にしたい君を傷つけてしまうほど」


意を決して紡ぎ出した台詞に、キョーコの息を呑み込む音が聞こえた。もう後戻りはできないと覚悟した蓮の口からは次々と言葉が迸る。


「愛を否定する君に愛される自信なんてなかった、だったら一番身近な先輩でいいから近くにいたかった、醜い俺を知られたくなかった、今の関係を壊したくなかったんだ!」


叫びと懇願に近い蓮の声に、キョーコは茫然と目を見開いていた。


「………私…?」

「こんなに惨めで愚かな感情だけど、君を想う気持ちを持て余している」

「……う…そ」

「嘘じゃない。最上さん、キョーコちゃん…君が好きだ」


逃げずに真っ直ぐ絡めた視線は、キョーコの方が耐え切れないとばかりに俯いて分断された。カーテンの隙間から零れる光で仄かに明るくなった部屋で、蓮はじっとキョーコを見つめていた。その手は二つの石ごとキョーコの手を離すまいと握り続けている。

しばらくの沈黙の後、蓮の耳にわずかに空気を震わせる程度の小さな音だったが、確かにキョーコの声が伝わってきた。


「…………怖かったんです。好きな人がいるのを知ってたから」

「…うん」

「………だから、一番近い後輩の自分を失いたくなかった」

「…俺も今の関係を失うのが怖かった」

「…でも、気持ちが止まらなくて…コーンの優しさに縋って身代りにしたんです」

「…身代りでもいいからって求めたのは俺だよ」

「…こんな汚くて、卑怯で…っ」

「卑怯なのは俺も同じ」


いつまでも続きそうなキョーコの言葉を遮ったのはやや強い口調の蓮の声だった。


「俺も卑怯なんだ。許されないと自分で言ってるのに謝って。そして今だって期待してる」

「……期待?」

「俺が君を想うように、君が俺を想ってくれてるんじゃないかって」

「………っ」


途端、キョーコの表情が強張った。


「君が会いたい気持ちが止められなくてここに来たって言ったこと、後輩として側にいたいと言ったこと」

「…………」

「俺に好きな人がいるって君には話したことがないと思っていたから、君が好きなのは俺じゃないんだって思ってた」

「え…?」

「あの鶏君は坊っていうんだね。恋を理解できない俺にアドバイスをくれたのは、君…だよね?本人に相談してたなんて。あの着ぐるみの中身が君だなんて想像してなかったよ」


思いがけず出てきた単話題にキョーコは目を泳がせる。色々と不都合があって蓮には内緒にしていた坊の仕事に後ろめたさが湧き出してきたのだ。


「ねえ、最上さん。俺は鶏君に相手はどんな子だって言ってた?」

「………こ…高校生…で」

「君も高校生だろう?」

「……4つ、年下…で」

「俺と君の歳の差は4つだろう?君は役者の命が惜しければ落とせって言ってたね」

「で、でも…っ、敦賀さんの好きな人って『キョーコちゃん』じゃ…」

「それは君の名前だろう?…あれ?でも俺は鶏君に名前まで言ってなかったんじゃ…」

「敦賀さん風邪をひいたときに神々しい笑顔で『キョーコちゃん』…って。愛おしいと思っている、嘉月の…美月を見る表情と同じでっ。その時、敦賀さん私のことようやく名前で最上さんって呼んでくれるようになったくらいで…っ」

「石を拾って君がキョーコちゃんだって気が付いた後だったからね。無意識って怖いな…自覚してないそんなころから君を気にしてたのか…」

「………」


キョーコの言い分をことごとく反論するように覆していく蓮に、キョーコはついに黙り込んでしまった。


「………なんですか、コレ…。意地悪というか、いじめっ子というか…。コーンは優しいのに…」

「だから、俺も卑怯だって言っただろう?」


とうとう絞り出された台詞に蓮は小さく笑った。先ほどまでお互いを卑下して懺悔しあっていたのに、射し込む光とともに妙な軽快さが入り混じる。


「俺が君にしたことは許されることじゃない。でも、君も俺と同じ想いを抱いててくれるなら…って期待してる」


小さく笑みを零した後、真剣な目で蓮に射抜かれてキョーコは身動きが取れなくなった。


「ねえ、最上さん。君の口から君の気持が聞きたい。卑怯で甘い期待を持つ俺に、審判を下して?」


朝日に照らされた部屋で、蓮の懇願にキョーコの視線は彷徨い宙を泳ぐ。


「君が好きなんだ。君の気持を聞かせて」


黒髪に碧眼の見知っているけど見慣れない想い人を前に、キョーコはようやく覚悟を決めた。




~~~~~~


一回に入りきらんかった…。尻切れトンボ気味ですがここで区切ります。

途中の重さに対してそれでいいんかー!!??というお叱りが聞こえてきそうですが耳をふさぎます・・・。もうテイストがかわりまくり!!



| 壁 |д・)…チラッ



こ・・・こんばんはー・・・・

石、飛び交ってますね・・・。否、私めがけて飛んできてますね?



そんなわけで(←?)、前回の呟きにチラリと書いた通り、暴走行為をはたらきました。

某様のお話に夢中になって翻弄され、某様のコメント返しで良い様に手のひらで転がされ、ちょうどストレスマックスで逃避先を無意識に求めていたという状況も手助けして・・・妄想を書き殴ってしまいました・・・。


某様のお話があまりにも魅力的すぎて、うっかり妄想スイッチが入り、そのお話の間を埋めたりその後を妄想したりとやりたい放題です。

・・・・おびただしい(?)かどうかは判断人それぞれですが、それなりのボリュームのある暴走妄想を某様に爆撃テロ!?って勢いで捧げさせていただきました。(←押し付ける、がニュアンス的に正しい)



あえてリンクは張りません。っていうかバレバレですよねー・・・。

既存のお話の間を埋める様に妄想を書き連ねたのですが、ネタ合わせをせずに書いたのもあり矛盾点も多分に存在します。

そして書いた私としては、このお話とこのお話の間の話・・・とかイメージはあるのですが、公開は某様の一存にお任せしているので、時系列の並びか分かりにくいかもしれません。そこらへんは脳内補正をかけていただけるといいかな?


あと某様はとても寛大なので、こんな失礼な行為を笑って許して下さいました。

でも本来なら激烈にマナー違反なので、便乗行為はお気を付け下さいませ。←お前が言うな。


で、私がいかに暴走したか・・・該当場所にお邪魔すれば犯罪行為の一部始終が確認できますw

文章のボリュームはまちまちですが都合8話、お話を献上してあります。献上したお話は先方ですべて公開(限定記事含む)になっております。



しかし!!某様はそんなに甘くなかった!

えーと、当ブログに遊びに来てくれる方ならご存知でしょうけれど、わたくし、チョー誤字脱字・おかしな日本語が多いです。

しかも勢い任せなので、1回の見直しで気が付かなければ、見直ししても意味のないレベルなのです・・・!←自分とこのサイトなら自分で治したい放題ですがね。


献上先で誤字にまみれた自分の文章を見るたびに、少々の後悔が押し寄せます。


しゅ・・・・羞恥プレイ!!!


誤字脱字が多いのは仕様と考えていただくと幸いです。読みにくいのは諦めてくださいませー。

あああ。アソコもあれも修正したい!!どう読んでも不自然でしょ?その言い回し直させて~~~!!!ってところも多数だったりします。←いかに勢い任せだったか分かりますw


・・・・・・・・しかも桃パートの描写より誤字脱字の修正が効かない方が気になるっていうのはどうよ?ww



ついでに!

お話一つずつのタイトルは某様が考えて付けてくださいましたー!!あのタイトルのセンスには脱帽です!!


某様、本当にありがとうございました!!!

ザ・花ゆめ掲載のスキビ番外の続き妄想です。未読の方・ネタ/バレお嫌いな方はバックプリーズ!!

ありきたりですが、意図的被せではないのでご容赦ください。






※番外続き妄想Aの設定でのお話ですー。というか時間軸はAの前・・・ですね。バレンタイン当日の夜くらいかしら?



番外続き妄想 B




しゅるしゅると可愛らしくアレンジされたリボンを解き包を開く。

思わずごくりと唾を飲み込んでしまったのは僅かな緊張のせいだろうか。


『ダメです!』


『お家へ帰って一人で見てください!!』


『私が恥ずかしいからです!!』



受け取った時のキョーコのセリフが頭の中に蘇る。

本来であれば好意を抱く女性からのプレゼントという事であれば、少なからず気持ちは浮足立っているはず。しかし蓮はどうしてもプレゼントを開ける時に発生するはずのウキウキと言った気持ちを感じることができない。いうなれば、別の意味でのドキドキ感はあるのだが…。


かさ…


ソファーに腰掛けローテーブルに置いた包のリボンを外すと、蓮は箱を持ち上げた。

大きさの割に軽いその箱。受け取った時から大きさの割に軽いこの包に疑問を抱いていた。

両端を曲線で折り蓋をしたピロータイプの箱の端を跳ね上げて開き中に手を入れる。


(…?柔らかい?)


指先に感じた感触に疑問を感じつつ、蓮は意を決してそれを引っ張り出した。


「…………」


(………ひ…つじ?)


中から出てきたのは、幸せそうな表情で目を閉じている羊と思わしき可愛らしい物体。

色々覚悟はしていたのだが、今まで受け取ったことが無い類の想定外の物とのご対面に蓮はそれを手に固まるしかない。


しかし悲しいかなキョーコの言いつけを律義に守った蓮がいるのは自宅リビングで、当然一人。

このような展開でツッコミを入れてくれるべき社も当然そばにはいない。


(…………確かに、恥ずかしい…かもしれない…)


どう反応していいか分からない蓮はたっぷり数分その羊を見つめた後、がっくりと項垂れてそう判断する。


自分の商品価値や世間のイメージを熟知している優秀な俳優は、今手の中にあるモノと自分との大いなるギャップを認識中だ。

そしてふと、自分の想い人であればこのような可愛らしいぬいぐるみはきっと好みだろうなとぼんやりと考える。

別に可愛らしいものが好きとか嫌いとかそう言った問題ではないのだ。


「でもなんでぬいぐるみなんだ?」


しかも羊。

まったく関連性が分からない。


しげしげと、手の中の羊を見つめる。

肌触りのいい柔らかな表面は可愛らしい薄いピンク色。

幸せそうに目を閉じたその表情は、過去数回目撃したキョーコの寝顔に似ている気がする。


(……………かわいい)


キョーコに似ていると気が付いて自然にそう思ってしまった自分に苦笑しつつ蓮は手の中の羊の腹部をぽふぽふと押す。柔らかなその感触に、ついついキョーコも…と思ってしまいフルフルと頭を振った。


「…ん?」


ふと、蓮は自分の足元に落ちている紙に気が付いた。どうやら一緒に入っていた商品についての但し書きらしきその紙はこの羊を引っ張り出した時一緒に出てきて落ちてしまったようだ。

二つ折りのそれを拾い上げて、内側に書かれた内容に目を通す。


(極上の眠りを提供する安眠…枕…?)


ぬいぐるみだと思っていたそれの正体はどうやら枕らしい。

どうして…と疑問を抱きかけたが、蓮はとっさに枕が無いと眠れないとキョーコに言い訳したことを思い出して再度脱力し、ぱたりとだらしなくソファーに倒れ込む。


律義な後輩は、枕が無いと眠れない先輩のために携帯できるこのサイズの枕をプレゼントに選んだのだろう。

自分が行き当たりばったりで撒いてしまった種がこんなところで発芽して陽の目を見るなんて思ってなかった蓮は、過去の自分の発言をいささか後悔する。


(同じ枕なら、最上さんの膝がいい…なんて言えればな…)


あの時のキョーコの膝と柔らかく頭を撫でた手のひらの感触が蘇る。


思ってしまった事にため息を漏らし目を開けると、目の前には安眠を約束してくれる羊枕。

だから羊なのか…と今更なことを思いつつそれを眺めていると、蓮は何故だか罪悪感に駆られた。

まるで、何で横になっているのに枕の私を使わないんですか?と訴えかけられているようだ。

しかも性質の悪い事に、その訴えはキョーコの声で蓮の脳裏に響くのだ。


その上この羊はキョーコからのプレゼントだ。今度会った時にお礼を言うためにはやっぱり使用感も伝えるのが礼儀だろう。


「ごめん…キョーコちゃん」


思わず口にした自分の言葉に蓮は再度苦笑した。

目の前の羊を引き寄せて、頭の下に入れ込んでみる。

手にした時と首筋から耳あたりで感じる柔らかさは微妙に印象が違い、何度も撫でたくなってしまう手触りは確かに枕として絶妙だ。


(でも、やっぱり最上さんの膝の方がいいな…)


そんなことを思いつつ、今日一日いろんな気分の上下のあった蓮は脱力と同時に夢の世界に落ちていく。あわよくば、キョーコの夢を見たいと思いながら。




そして、こっそりとこの羊枕に『キョーコちゃん』と名前を付けたのだった。




ザ・花ゆめ掲載のスキビ番外の続き妄想です。未読の方・ネタ/バレお嫌いな方はバックプリーズ!!

ありきたりですが、意図的被せではないのでご容赦ください。






※番外編の直後からの続き妄想と思っていただけると幸いですー。


番外続き妄想 A




(ふふ…かわいい…)


部室ドアに背中を預け、開いた携帯の画面を見つめてキョーコの頬は自然に緩んでいた。


視線の先には可愛らしい羊枕に頬を寄せて目を閉じた麗しの美貌。

可愛らしい羊と端整な顔立ちのミスマッチが妙にかわいい。


(寝てるときは、俳優の顔でもなくて…なんか素の敦賀さんって感じ?)


夢の中に居る時まで演じることはできやしない。手にした画像は数少ない蓮のプライベート…しかも完全に素の表情だ。

誰かに見せるなんて自分の犯罪的行動を証明するようなことはできやしないが、自分一人だけの奇跡のショットに優越感と独占欲が満たされていくのをキョーコは感じていた。


「宝物にしよう…」


(あの敦賀蓮に『かわいい』ってなんか変な感じだけど、かわいいものはかわいいんだもん)


何度見ても自然と口元が綻ぶ。

携帯を握りしめて、キョーコはまたにへっと笑みを零す。


しかしあまりにも手にしたモノに気を取られていたため、キョーコは自分に迫ってくる気配に気が付くことができなかった。


「最上さん?どうしたのそんなところで」

「ひっ、ひぇいいぃぃ!!??」


不意に呼びかけられ背を預けたはずドアに押される感覚に、キョーコは文字通り飛び上がった。


(な・な・なっ!!!ご、ご本人~~~~!!!)


「ご、ごめん。驚かせちゃったみたいだね?」


キョーコの驚きように声をかけた蓮の方が目を丸くする。


(どどどど、どうしよう!見られた!?気づかれた!!??私が罪を犯したことを!!??)


トップスターの盗撮なんてどう考えたって犯罪だろう。警察に突き出されても文句は言えない。


キョーコの脳裏に

『LEM所属タレント京子、白昼堂々盗撮!人気俳優が毒牙の餌食に!』

『愛の欠落者、歪んだ感情はストーカー行為に発展!?』

と三流週刊誌の見出しが乱れ飛ぶ。


(恋心を取り戻したはいいけれど、これじゃアイツの時よりひどいじゃない~!!!確かに今の私は昔の私とは違うんだわっ)


尚の時は限定ポスターのために自転車でショップのレジに突撃したりもしたが、あくまであれはオフィシャル品。尚の盗み撮りなどいくらでもできたはずなのに、その当時はそんな考えは微塵も持たなかったはずなのに。

そもそもその当時携帯電話を所持しておらずその利便性を認識していなかったし、カメラで写真を取る習慣もキョーコには薄かったため、情況が現在と随分違うはずなのだが本人はそのことに気が付く余裕などない。


キョーコのあまりの驚き様に蓮もどう反応していいのか分からなかったのだろう。しばし二人の間に沈黙が流れる。

キョーコはバクバクと飛び出さんばかりに震える心臓を胸に抱え、目を見開いて蓮の反応に戦々恐々としていたがキョーコの悪事に嫌悪する色も蔑む色も、その表情からはうかがえない。怨キョレーダーがマックスの感度で蓮の様子を探っているが、どうやら怒りのオーラは検知できない。


(も…もしかして、ぎりぎりセーフ…?)


顔色を悪くして固まるキョーコの様子を、蓮は別の意味でとらえたようだ。


「あ、携帯…。壊れてたり傷ついてない?」


ホッとしかけたのもつかの間、蓮が発した言葉にふと己の手元を確認した。


(きゃぁぁぁぁぁあああああああああ!!!!!)


握りしめていたはずの携帯電話は手の中になく、驚いた拍子に放り出してしまったようで床に転がっている。

幸いなのは開いた画面が下を向いており、蓮の目には携帯画面が見えない状態という事。


「だっ!大丈夫ですからっ!!」


(だっ、だめっ!!見られたらもう一巻の終わりよ~~~!!!!)


それを拾い上げようと手を伸ばした蓮より早く、電光石火の俊敏さでキョーコは携帯を奪うように拾い上げた。すぐさまボタンを押して通常待ち受け画面を呼び出して二つ折りの携帯を閉じる。

その間わずか数秒だが、蓮はじっとキョーコの表情を見つめていた。

キョーコはほーっとため息を吐き出したが、目の前に盗撮した本人がいる事実を今更ながらに認識しすぐには顔を上げられなかった。


「本当?傷ついたり壊れたりしてない?」

「だ、大丈夫ですよ?」

「でも、画面が床に接していたし、最上さん結構派手な音立てて落としてたから」

「ほ、本当に大丈夫ですからお気遣いなく!」


キョーコは閉じた携帯を開いて、画面に傷がついてないことを証明するように蓮に差し出した。


「そんな携帯を見せなくてもいいよ。携帯操作してたからメールでもしてたんじゃない?」


キョーコの潔白を示すような行為にいささか驚いたのは蓮の方だ。画面を見ないように目を逸らしている

蓮は、急いで拾い上げたキョーコの携帯はメール作成画面を表示したままだと思い込んでいるらしい。


「大丈夫ですよ?普通の待ちう…け………」


(…………あれ?)


キョーコは言いかけて蓮に向けていた携帯に視線を落とす。

蓮の前ということを忘れ、カチカチと画面を操作する。


(き、きやぁぁぁぁぁぁぁあああああああ!!!!!!

ないっ!!宝物が!!!奇跡の一枚がっ!!!!!)


キョーコは写真を撮った後保存ボタンを押さないまま、蓮の寝顔を愛でていたのだ。慌てて通常画面を呼び出した際に保存を押さず消去してしまったらしい。


「も、最上さん?大丈夫に見えないほど顔色悪いよ?」


叫び声は何とか心の内に留めたものの、みるみる顔色を悪くしたキョーコに慌てたのは蓮の方だった。


「とにかくっ、横になった方がいい」


半ば放心状態のキョーコは蓮に引きずられて部室の中のソファーに座らされていた。


「靴脱いで。足をあげて横になった方が良いだろう?」

「………へ?あ、…あのっ、そんなっ」


携帯を握りしめたままのキョーコは、廊下に放り出した自分のカバンを蓮がテーブルの上に運んでくれているのを目にしてふと我に返った。


「良かったら枕もそれ使って?」

「………え?」


勝手知ったる様子で部室の棚からブランケットを出してきた蓮に何でそんなにこの部室になれてるんですか!とツッコミを入れかけたキョーコの動きが止まった。

蓮が指し示したのは先ほど画面におさめたラブリーな羊まくら。


「最上さんに貰ったそれ、すっごくいいよ。しっかり休めること請け合い」

「あのっ、でもこれっ…」


にっこりと笑顔の蓮にキョーコはちくちくと胸を刺す罪悪感を覚える。


「……あれ、信用してないの?もしかして最上さん、効果があるか分からないモノを俺に?」

「ち、違います!実証済みです!!自分で使ってみてよかったからっ」


キョーコの部屋には色違いの羊まくらが存在する。枕が無いと眠れないと言っていた蓮のために、コンパクトで寝心地の良い枕を探し実験し尽くしたのだ。蛇足だが、キョーコ的最高ランクを獲得したこの安眠枕をこっそりモー子さんと名付けて愛用しているのだ。


「じゃあそれ使ってちょっと休めばいいよ」

「そうじゃなくて!そもそも、私具合なんて悪くないですっ」

「あんなに顔色が悪かったのに、何でもないっていう方が嘘だよ。それともやっぱり携帯壊れてたんじゃ…」


(敦賀さんの画像を保存しそびれて無くなっちゃったからなんて言えやしないじゃない!!)


後ろめたさから、蓮が浮かべている笑顔の種類に気づけないキョーコは黙り込んでしまった。


「ほら、休める時に休む自己管理も仕事の内だよ」


とん、と蓮に肩を押されキョーコは抵抗できないままソファーに倒れ込んだ。頭の着地地点には自らが蓮に捧げた後悔の塊がスタンバイしており、ポスンとキョーコの頭を優しく受け止めた。


(うわっ…っ)


先ほどまで蓮が使用していた羊まくらは仄かに温かく、キョーコの頭を受け止めた衝撃でその身に吸い込んでいた蓮のフレグランスを放出する。


「~~~っ!!!」


(いったい何の羞恥プレイよー!!??)


その温度と香りに今度は顔に熱が込み上げ青かった顔色が反転する感覚を覚え、キョーコはまたしても内心で絶叫する。

とはいえ、目の前には当の本人が居るのでみるみる赤く染まる顔を見せる訳にはいかない。


(自覚した途端敦賀セラピーがセラピーじゃなくなるってどういう事!?こんなんじゃ心臓が壊れちゃう!!)


「横になった方が楽でしょ?」


赤みが差したキョーコの顔色を見て取った蓮が、ぽんぽんとキョーコの頭を撫でる。


(…っ、この天然プレイボーイ…っ!)


更にグンと上がりそうな熱に、キョーコは蓮の視線から逃れようと顔を羊の腹部に押し付けた。それはそれでより深くこの枕の香りを吸い込んでしまい余計落ち着かなくなるのだが。


「最上さん、それじゃ窒息しちゃうよ?」


クスクスと笑う蓮の声が降ってきて、顔を上げなさいと言うようにちょいちょいと前髪を軽く引かれる。


(落ち着いて、落ち着くのよキョーコ!ここで気づかれるわけにいかないんだからっ!)


キョーコは深呼吸をして気持ちを落ち着け、そろりと埋めていた顔を上げた。


その瞬間



カシャ



耳に飛び込んできたのは、先ほど自分の心臓を縮み上がらせたシャッター音だった。


「!?」


パニックに陥ったキョーコの目の前で、蓮はスマートフォン画面を操作しながら満足気に微笑んでいる。


「この羊、貰った時から最上さんに似てるなぁって思っててさ」

「つ、つ、敦賀さんっ!?」


なんてことないようにそうのたまう蓮に、キョーコは思わずガバリと起き上がった。


「うん、可愛く撮れた。やっぱり似てるね」


蓮はスマートフォンを差し出して画面をキョーコに見せた。そこにはちょうど枕から顔を上げかけて口元が枕の陰に隠れ上目遣いに画面を見上げるキョーコと、幸せそうな表情の羊がうまい具合に収まっている。

画面のキョーコの頬には赤みが差しており、この赤みはピンク色の羊の色合いの反射でそう写っているだけだと暗示をかけたくなるような状態だ。


「なっ、なっ、何ですか、いきなりっ!しかも勝手にっ」

「それを君が言うの?」


思わず取り上げようと伸びた手を躱した蓮の言葉に、空を切ったキョーコの手がぴたりと静止した。


「さっきさ、シャッター音がしたんだよね」

「…………」


スマートフォンを胸元のポケットにしまった蓮はにっこりと笑っているが、キョーコは思わず掴み掛ろとしたまま固まっている。しかしその表情は赤みが差していたのが一転、また血の気が引きかけている。


「これで許してあげるって言ってるんだけど?」

「……っ」


(詐欺師っ!不公平だわっ!私の宝物は残ってないのにー!!??)


そうは思っても、今その主張を口にすることもできないキョーコは歯噛みする。

今度は理不尽な怒りでまた頭に熱が昇ってくる。

目まぐるしく変化するキョーコの表情と顔色は雄弁にその感情を映している。


蓮はそんなキョーコを前に、さらに追い打ちをかけた。


「じゃあ…どうしてそんなことをしたのか教えてくれたらこの画像をどうするか考えてあげても良いよ?」

「……っ」


(どうしてとかだなんて、言えるわけないじゃない!!)


フルフルとキョーコが震えて返事に窮していると、コンコンとドアをノックする音が響いた。


「おーい、蓮。悪いけど、ちょっと出てきてくれるか?」


飲み物を買って社が戻ってきたようだが、社は気を遣ってかドア越しに声をかけ中には入ってこない。

キョーコと対峙していた蓮はドアに歩み寄り、そのまま部室入り口で社と言葉を交わしている。漏れ聞こえる会話から、どうやら急に俳優部に出向く用事ができたようだった。

蓮は社との会話の後、キョーコを振り返った。


「最上さん、ちょっと行ってくるけどまた戻って来るから。荷物の番お願いするよ」

「あ…はい。行ってらっしゃいませ」


そう言い残した蓮に思わず普通に返事を返したキョーコ。

蓮がドアの外に消えて行くと、パタリと羊まくらの上に突っ伏した。


(バレてた!バレてた!!もー、逃げたしたいっ!!)


そうはいっても蓮に荷物の番を言いつかってしまい、仕事に真面目なキョーコはこの隙に部室を逃げ出すことなどできずジタバタとソファーの上で足を蹴ってぐりぐりと顔を枕に押し付ける。さらに深く吸い込んだ香りに色々と込み上げてくるものがあり、今度は奇声を上げてまたガバリと顔を上げた。


「うううっ、もうっ…!」


かといって枕を放り出すこともできず、キョーコは愛らしい羊をきゅっと抱きしめた。

恨めし気に自分の贈った羊を見下ろすが、羊は相も変わらず幸せな表情で目を閉じている。


(ほんとにもうっ…!この枕は後悔の塊だわっ)


憎めない表情のそれ。

逃げ出せない状況に、キョーコは蓮が戻ってきた時に狸寝入りをしてしまおうと半ば諦めの境地に達したのであった。


~~~~


纏まらずに終わりますw

スランプは続くよ何処までも・・・・。うん、文章がおかしい。orz


古ーいお蔵入りを無理矢理発掘☆

あまりの更新できなさっプリに暴挙に出ました。正しくはACT200あたりからの派生で、ちょっと前にお蔵入り決定と思ってたやつなのですが…。キョコさん自覚後、ヒール兄妹続行中、くらいの時系列の妄想です。

視点が定まらず迷走していますがご容赦くださいw
タイトルは適当・・・というか、着地点がズレたのでマッチしておりません(失笑)


*:..。o○☆゚・:,。*:..。o○☆


『愛』について考えてみた




今日も今日とていつも通りに難しい顔をしてうなり声を上げる愛の欠落者1号を、2号と3号は気にする風でもなく愛の伝道師に課せられた課題レポートに取り組んでいる。

しかしブツブツとまるで呪詛のように憎々しげに吐かれる独り言に、2号こと琴南奏江の堪忍袋は易々と切れた。

そう、関わると面倒なことになると分かっているのに…こらえ性の無い奏江の行動に、内心溜息をつきつつも結局キョーコを甘やかしている奏江に付き合う自分も随分と丸くなったものだと3号こと天宮千織は退屈で飽きてきたレポートに止まっていた手の中のペンを手放した。


「あーーーっ、もうっ!!!何なのよ、さっきからブツブツブツブツ!私たちの邪魔したいんならよそに行ってちょうだい!」

「だぁってぇ~…」

「だってもクソもないわっ!さっきから構ってオーラ出しまくって、ウザいったらありゃしないのよ!」

「モー子さん、構ってオーラって…ヒドイぃ!そんなことないモン…」


上品な上辺を取り払い乱暴な言葉遣いの奏江に、もったいないなぁと思いつつ自分の事を棚に上げた千織はじゃれ合いの様な二人のやり取りの観察を楽しみ始めた。


この繰り返される日常はすでに見慣れたもので、本人はそんなことないと否定するが奏江のいる前でわざとらしく何かしらを呟くキョーコは十分甘ったれているし、そんなキョーコを叱り飛ばしながらも結局は話を聞きだす奏江がそれを助長しているのは明らかだと。

しかしながら、こんなベタベタと慣れ合うのをうっとおしいと思っていた自分は、この二人の空間に放り込まれてもそんなに不快感を感じないのだから不思議なものだ。


千織は苦笑交じりの溜息をそっと吐いて席を立ち、美容効果があるのだとキョーコが持ちこんだハーブティーを淹れる。もちろんこのお茶は女優としての美意識の高い奏江の為にキョーコが用意した物だ。嬉しいくせに、しれっと「それなら飲んであげてもいいわよ」と言い放った奏江は、なんだかんだ言って好んでこのお茶を飲む。以前千織がそれを突っ込んだら、真顔であの子の味覚とか作るモノって間違いないのよね。悔しい事に、と言っていた。事実なんだろうけれども、多分に照れ隠しが含まれてるその言い様に吹き出してしまったのは記憶に新しい。


「その独り言を止めるか、外に行くかどっちかにして!」

「ええ~?聞いてくれないの?」

「ほら見なさい!やっぱり構ってほしいんじゃない。この嘘つき!」

「でもぉ…、これってラブミー部員の私たちには重要な懸案だと思うの」


奏江に言いすがるキョーコが手にしているのはどうやらオファーを受けたらしいドラマの台本。

立ち上がってドアを指差していた奏江は、それを見て片眉を上げ渋々と言ったようにどかっと乱暴に椅子に腰を下ろした。

芝居絡みということを表向きの理由にしているんだろうけど、結局奏江はキョーコに甘いのだ。

奏江が腰を下ろしたのを見て、キョーコはぱぁっと顔を綻ばせた。

どこのバカップルよ…と内心思いつつ、千織は良い香りの立ち上るマグカップをさりげなく二人の前に置いて、自分の分は手にしたままいつもの指定席に収まった。


「キョーコさんが悩んでるのって、このドラマのこと?」


奏江よりも先に千織が口火を切った。奏江はそうよ、話しなさいよと目で言いつついれたてのハーブティーに口をつける。


「うん…、セリフで引っかかるところがあって」

「アンタねぇ…。ドラマの台本は台本通りに演じればいいんだって前に言ったじゃない。そのセリフの背景や構成を考えるのは作家の仕事でしょ?前にそれでケチつけて面倒になったこと忘れたの?」


奏江は以前あった養成所での出来事を指して、苦々しい顔をした。


「敦賀さんは演じる役柄の背景を掘り下げて考えるのは役者の仕事って言ってたし」

「それこそ、俳優によって違うんじゃないですか?どっちが正しいとか無いと思いますけど…」


対立するような先輩俳優の意見を述べるキョーコに奏江が口を開く前に、千織は口を挟んで腰を折る。

演劇論は交わしていて楽しいけれど、ことキョーコに関して件の先輩が絡むと演劇論ではない感情が織り交ざり話が明後日の方向に行くことが多いのだ。

芝居の話となれば、千織だって興味深い。なんだかんだ言って愛の欠落者3名は全員演じることを愛しているのだ。


「それで、キョーコさんは何が引っかかってるんですか?」

「これ…なんだけど」


キョーコが広げた台本は、何度もキョーコが見返しているのだろう、そのページだけ癖がついてしまっていて、比較的新しいにもかかわらず支えて無くてもそのページが閉じることはなかった。


キョーコが演じるのは主演キャラクターの友人役。

帰国子女の大学生が友人たちと過ごす一場面で、ボーイフレンドもその場に居合わせて何気ない会話を交わすシーンだった。


「…なにこれ?あんた彼氏のいる役柄はラブミー部員だからできませんとか馬鹿なこと言うの?」


なんてことないシーンだと、奏江は呆れてキョーコの顔を見た。そしてふと、新人発掘オーディションの時電話口から流れてくる謝罪と愛を囁くセリフへの反応で、悪鬼のごとく罵詈雑言を吐きケータイ電話を破壊したキョーコを思い出して止まってしまった。

ラブミー部だとか、恋愛を愚かと断言するとか、個人的な見解はともあれ、そこそこ演技の仕事を貰い始めたキョーコがまさかこの程度の場面をなぞるだけでもまだ拒否反応を示すというのだろうかと、奏江は疑問を持つ。


「恋愛要素の強いドラマでも役どころでもないし、いつも通りニコニコ笑ってこの台本通りのセリフをしゃべればいいじゃない」

「そうですよ。まあ、このセクションに所属している以上濃いめの恋愛ドラマは苦手としても、この役だと主人公との信頼や友情の方がメインでしょう?キョーコさんそれは得意じゃないですか」


チラリと奏江を見つつ千織が述べた助言に、奏江は少しだけむっとした表情を見せたがキョーコはますます申し訳なさそうに小さくなる。


「……なんなのよ」

「キョーコさん?」


しばしの沈黙の後、おずおずとキョーコの指があるセリフを指し示す。


『愛してるわ』


「「………」」


その単語だけ目にしてしばし、俯くキョーコとセリフを見比べてしまった二人だが、よくよく台本の中のその言葉の位置づけを確認してみればなんてことはない。

帰国子女のキョーコの役が、雑談の別れ際にボーイフレンドと頬は触れ合うキスを交わした後に口にするセリフだった。


「こんなの、外国人じゃよくある光景でしょ?キスって言っても頬同士が軽く触れるだけじゃない。アンタまさか、これでも破廉恥だなんだって騒ぐわけ?」

「そうじゃなくて、ハグやキスは慣れたというかなんというか…」

「じゃあ何なのよ。外国人のアイラブユーは挨拶みたいなもんだって言うじゃない」


奏江は無視したが、さらりと落とされた爆弾発言に千織は思わずじっとキョーコを見てしまった。

天然記念物的乙女のキョーコがハグやキスに慣れるっていったいどういうことだろうか?女子高生ばかりのBOX-Rの楽屋ではナツが抜けた状態であれば、ちょっとのエッチな下ネタ話でも真っ赤になるキョーコは共演者のいい玩具になっていたのに…と、千織は違和感を持つが、その割にはエグいデザインの下着を平然と手に取って購入していたキョーコの姿も見たことがあったと思い出していた。


「台本通りににっこり笑って、頬キス交わして『愛してるわ』でいいじゃない」

「ででででも…っ、あ、あ、ああああいしてる、なんて言い慣れて無くて…」


また明日、の様な軽い挨拶として帰国子女設定の役柄に当て嵌められたそのセリフ。

キョーコは頬キスはスルーして、『愛してる』の単語を口にすること自体を躊躇っているようだ。


「じゃ、練習。ほら、私相手に愛してるって言ってみなさいよ。得意でしょ」

「愛してるわー!モー子さんっ………って、そうじゃなくて!」


台詞のみならず、がばっと両手を広げて奏江に抱きつこうとしたキョーコはひらりと躱されてしゅんとするが、空を切った自分の腕を見てそれからひとりツッコミが始まる。


「……なんていうか、日本語で表現されると重いって言うか、違和感があるっていうか」


街ゆく外国人を見かければ、人目をはばからず手を繋いでキスしてたりと思わず赤面して目を逸らしたくなるようなシチュエーションが日常茶飯事なのも分かっている。でも…と、キョーコはキョーコで悩んでいるようだ。


「愛してる、なんて言葉を、こ、こ、恋人っに、軽いノリで口にするってどうしていいもんだか…」

「この場面で日本人的な感覚で『愛してる』なんて言ったら重くておかしいでしょ。さらっと流せばいいじゃない」

「でもぉ…」


キョーコはキョーコで真剣に演技のために悩んでいるようだ。

千織は色々とツッコみたいし思うところもあるが続行しているキョーコと奏江の話の腰を折ることもできず、そのまま会話に合流した。


「じゃあ帰国子女らしく、日本語訳じゃなくて英語でI love youならいいんじゃないですか?英訳しちゃえばそんなに抵抗ないかも」

「確かにね。ラブミー部って言われて死ぬほど恥ずかしかったけど、これが日本語訳の『私を愛して』とか『愛され隊』だったら所属も養成所の学費の兼ね合いがあっても絶対入らなかったわ…」


それくらいのセリフのアレンジなら監督に提案してみてもいいんじゃないですか?と奏江と千織は台本に目を落としながらキョーコに助言をしている。


「………?キョーコさん?」


ふと、2人からの提案にキョーコからの反応が途切れて発生した間に、違和感を覚えて千織は顔を上げた。


「……」


見上げたキョーコの表情は時が止まったかのように停止していて、千織はひらひらとキョーコの眼前で手を振ってみた。

挙動不審で思いもかけない反応を素のキョーコがすることは共演する中で知って慣れすら出てきたが、脈絡なく長時間フリーズするキョーコに心配も募る。

反応に困り千織は隣にいる奏江にどうしたものかと視線を送るが、奏江ははぁ~~~と心底呆れ顔で大きなため息をついていた。


「…?」


自分の顔を見て疑問符を浮かべた千織に、奏江は無言でくいっと顎でキョーコの方を指示した。

『見てなさい、じきに分かるから』と雄弁に語る奏江の表情に、疑問は解消されないままだったが千織はキョーコに視線を戻した。


未だに止まったままのキョーコの表情だが、よくよく見れば色が違う。

ジワジワと首筋から耳にかけて朱色が昇って行く。


それは楽屋でコイバナでからかわれたキョーコが顔を真っ赤にするときに目にする色だけども、それならなぜ瞳が恋する乙女のように潤んでいるのだろうか?

見たことないキョーコの表情の変化に千織は絶句してしまった。


「……あ、アイ…ラブユーだなんて…」


英語でなんて…と困ったようにおろおろと視線を彷徨わせるキョーコ。

奏江はふんっと荒く鼻息を吐き出だした。


「まあ、ほら。私たちはどうせ愛の欠落者だし?」


めんどくさそうに、ため息が荒い鼻息になるくらいの奏江に、もしかしてもしかしなくてもそういうこと?と思った千織は思わずごくりと唾を飲み込んでキョーコの反応を伺う。

頬をバラ色に染めて恥じ入るキョーコは同性の目から見ても妙になまめかしかった。


「そう言った事は恋愛ドラマもバリバリこなすアンタの尊敬する先輩にでも相談してみたらどう?私の意見よりいっつも先輩の意見を聞いて役作りしてるんでしょ」


相手を暴露する奏江の言葉に、驚きつつも千織はキョーコの反応から目が離せない。

これ以上の、どんな乙女顔を愛の欠落者1号は持っているのだろうか?

というか、こんな反応が出来ればキョーコはその烙印を返上できるんじゃないだろうかと考えていた千織の目の前で、千織の想像を裏切るキョーコの表情が展開された。


「な…っ、なんてことを言うのよ!!モー子さんっっ!!!!!」


上気した朱色は一気にデットブルーに急降下し、その後今度は怒りで青筋が立った般若のキョーコがそこにいた。



*****


結局部室での演技相談は結論が出ないままで、セツカのヘアメイクを施されつつキョーコは折り目がついたその台本を見てはため息をついていた。


「どぉ~したの、キョーコちゃん。そんな溜息をついて!幸せが逃げて行っちゃうでしょ」

「あ!いえ。…次のドラマでのセリフの感情がうまく掴めなくって」


テンに台本を覗き込まれ、キョーコは素直に奏江と千織に話したのと同様の事を話しだしたのだ。


「そういう事はやっぱり蓮ちゃんに聞いてみたら?蓮ちゃん英語出来るから和訳と英訳のニュアンスの違いとかそう言うのもアドバイスしてくれるわよ?」

「何?最上さん何か悩み事でもあるの?」


そう会話を交わしていると、キョーコより遅れて車に乗り込んできた蓮が姿を現し、キョーコは思わず閉口してしまった。

その後はセツカのメイクに移ったテンにより、自ら口を開くことができず、キョーコの相談内容はテンの口から蓮に伝わってしまったのだ。





『お前は日系の血が濃く出たんだな』

『は…?』


ミス・ジュリ―ウッズの移動美容室で変身を終えた蓮とキョーコは、カインとセツカとしてホテルの一室にいた。


『日本人は言葉にして感情を伝えるのが下手くそだ』


脈絡なく振られた内容にキョーコは疑問を持つが、セツカとしてカインに答える。


『確かにあのノーと言えない優柔不断っぷりにはどうかと思うけど。ヘタっていうか奥ゆかしいって言うんでしょ?文化だって言う人もいるし』

『ちゃんと伝えられないんだから同じだな。隠すことが美徳だと思っている、おかしな話だ』

『それがどうしてアタシにつながるの?アタシ、兄さん以外の人から嫌なことを我慢して受けるほど暇じゃないわよ』


下手くそだとカインが言う日本人。撮影の最中もカインやセツカは日本を小馬鹿にする発言を口にしている。そんな日本人の血が濃く出ていると最愛の兄から言われれば、ここは怒っていいところのはずだとキョーコはむっとした表情でカインを見上げた。


暗にこれは日系とはいえイギリス人設定の雪花・ヒールとしては役作りとして失格という事なんだろうか?


キョーコがそんなことを考えていたら、カインが一歩セツカに近づいた。


『…I love you』


大きな手が項の髪を掻きあげて、不意打ちで耳元で囁かれた。



瞬間、キョーコの脳裏には抱きしめられて囁かれて、頬に込み上げた熱を抑えきれなかったあの時の光景が蘇る。


―――…I love you…―――


確かにあの時、耳元に吹き込まれた言葉はそれだった。


―――…愛してる…―――


いかに英語が堪能であれ、日本人のキョーコの頭はその言葉を日本語訳してその意味を認識したのだ。



『……っ!!』


セツカの仮面がはがれかけてかぁっと頬に血が上る。それをぐっと抑え込んで、キョーコは声だけはセツカを保って口を開いた。


『イチイチ言葉にしなくたって解ってる!』


セツは1に兄さん、2に兄さん、3、4も5も兄さんの重度のブラコンだ。スタッフの前でカップルつなぎだってするし、抱きしめられても肩を抱かれても腰を抱かれても平然と見せつける様に行動してきたというのに、一体何が不満なのだろう?


カインがセツカに対しての言葉と分かっていても、つい顔を出す中の最上キョーコの反応を恨めしく思う。

そうはいっても取り戻せたのは口調だけ。頬に上がった熱と赤みはそう簡単に引きはしない。キョーコは何とか顔を見られまいと考えるが、一歩遅かった。


『そう言うところが…だ』


するりとセツカから離れたカインは、真っ赤な顔を覗き込んでにやりと口角を上げた。

『英語圏ではI love youなんて挨拶と同じなのにな』

『……っ』

『別に日本人が軽々しく口にできない『愛している』とイコールじゃないのに』

『………知ってるわ』

『でも…』

『…なによっ』


そっぽを向いた赤みの残るセツカの頬を撫でて、カインがクツクツと笑う。


「この『I love you』はその意味でいいよ?」


「……へっ…?」


急に投げかけられた日本語と口調にキョーコも思わず日本語で振り返った。

そこにはカインの表情ではなく、クスクスと柔らかな笑みをこぼす蓮の姿があった。


「『I love you』も『愛してる』も違和感なく受け取れるように、しばらくは挨拶代わりに伝えるから、慣れてね?」

「え…あのっ…、つ、敦賀さん???」

「ほら、そうすればあのドラマのあのシーンも違和感なく演じられるんじゃない?」


そう笑う蓮に、からかわれたと悟るとキョーコは先ほどとは別の意味で顔に熱が昇った。


「ひ、ヒドイ・・・っ!からかったんですね!!」


セツカが抜け切っていないせいかポカポカと拳を振り上げるキョーコを、蓮は笑って受け止めてやっぱり聞き流されているかと苦笑した。


「だから、この『I love you』は日本語訳の意味でいいっていっただろう?」

「愛してるって、それだけで恥ずかしいです!」


「だから、重たくて日本人が口にするのが苦手な最重量級の『I love you』だって言ってるだろう?」


蓮の言った意味をちゃんと受け止めているようで受け止めていないキョーコに蓮はダメ押しを口にした。


「は……?」


「最上さん、好きだよ。愛してる。君が理解するまで、ずっと言おうか?」



その後、キョーコが真っ赤な顔で泣いて謝るまで蓮はキョーコを抱きしめて耳元で愛の言葉を囁きつづけた。


~~~~~

ライトな告白・・・。

そしてあの空白のセリフが『I love you』だったら・・・で考えていた発掘品。


纏まってなくてダメだなぁw


拍手はつけていないのですが・・・

諸事情につきコメント欄での返信ができないためこちらでお返事いたしますー。



くるくるみ様

コメントありがとうございました!

コメントいただいた記事がお知らせ用だったこと&リンクなかったので(アメブロIDなしの一般読者さん?)メッセージでの返信もできず、このような形を取らせていただきました。了承ください。


番外編、もう二人の可愛さに悶えますよね!もう幸せなご褒美番外編でしたよね~♪

いろいろ妄想掻き立てられますが、仲村先生の本家がかわいすぎてもう二次いらないんじゃねーかくらいで、妄想するだけでお手手が動きませんw


二次ではないダラダラつぶやきですので興味のない方はバックプリーズ!!!






まずはー。


現在承認待ちのアメンバー申請者様はおりません。

本誌感想アップの前後はアメンバー申請がどうしても増える(しかも案内ちゃんと読んでな申請がね・・・)ので、しつこいくらいお知らせを繰り返しアップしていて申し訳ありませんー!!もううちのブログの新着はご迷惑以外の何物でもないので、登録外してもらった方がいいんじゃね??とか思っちゃいます・・・。読者様・アメンバー様にはご迷惑をおかけして申し訳ないですー。


先月ほどではないですが、やっぱりなくなりはしませんねぇ・・・。

検索避けをしてみてかなりグーグル先生でのうちのブログのヒット率は減ったのですが、やっぱりアメブロのアクセス解析を見るとネ/タ /バレ目的でのご利用が多いみたいです。でも先月に比べれば格段に減ったので(あてにはならないだろうけど、アクセス解析上は約半分くらいになった―♪)私の精神衛生上も先月よりずっといいです。(・・・まあかといってちゃんと承認できない申請は不快には変わらないのですがw)


そして先月から、その・・・なんだ・・・

やっぱり連載中やモヤモヤ考えているお話を書く手が止まってしまったのは否めません。自分の構成力不足が主原因ですけど、やっぱり精神的コンディションって重要だなあと思いました。特にすぐ荒れたり凹んだりと浮き沈みが極端な私みたいな人間はね・・・。


本誌や単行本発売でテンションは大いに上がるのですが、以前のような妄想大爆発―!が少なくなった気がします。取りあえず、今はコラボで進めているお話を終わらせるのが先かなー(自分一人の問題じゃないのでw)とかなり頑張った気がしますー。こっちはだいぶ大詰めですww


それで・・・ですねぇ・・・(汗)

ここ最近のアップが全て限定記事という4月の状態にちょっと思うところはあるのですよ・・・。

自分で記事一覧を開くとお知らせ系以外全て限定という・・・(((゜д゜;)))


感想と限定コラボしか書いてないせいなのですが、分かっちゃいるのですが、その事実に愕然です・・・!!

ごーめーんーなーさーいー!!!


通常でアップできる作品がまとまってない(というか書き進んでいない・・・orz)のはかなり不味いので、何とかエンジンをかけたいところなんですが、どうもエンジンのかけ方を忘れたくさい。

ああでもACT211から派生の小話が出て来そうで出てこない、何か喉に引っかかったような状態なのよねぇ。でも書いてみても、二番煎じ三番煎じになりそう。


なので次はとまっているラスト間近の続き妄想で!と言いたい所ですが、多分また限定記事の番外感想になりそうだなー・・・。



と、以上言い訳と謝罪(←している態度じゃないけど)でしたー。