『愛』について考えてみた | 妄想最終処分場

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古ーいお蔵入りを無理矢理発掘☆

あまりの更新できなさっプリに暴挙に出ました。正しくはACT200あたりからの派生で、ちょっと前にお蔵入り決定と思ってたやつなのですが…。キョコさん自覚後、ヒール兄妹続行中、くらいの時系列の妄想です。

視点が定まらず迷走していますがご容赦くださいw
タイトルは適当・・・というか、着地点がズレたのでマッチしておりません(失笑)


*:..。o○☆゚・:,。*:..。o○☆


『愛』について考えてみた




今日も今日とていつも通りに難しい顔をしてうなり声を上げる愛の欠落者1号を、2号と3号は気にする風でもなく愛の伝道師に課せられた課題レポートに取り組んでいる。

しかしブツブツとまるで呪詛のように憎々しげに吐かれる独り言に、2号こと琴南奏江の堪忍袋は易々と切れた。

そう、関わると面倒なことになると分かっているのに…こらえ性の無い奏江の行動に、内心溜息をつきつつも結局キョーコを甘やかしている奏江に付き合う自分も随分と丸くなったものだと3号こと天宮千織は退屈で飽きてきたレポートに止まっていた手の中のペンを手放した。


「あーーーっ、もうっ!!!何なのよ、さっきからブツブツブツブツ!私たちの邪魔したいんならよそに行ってちょうだい!」

「だぁってぇ~…」

「だってもクソもないわっ!さっきから構ってオーラ出しまくって、ウザいったらありゃしないのよ!」

「モー子さん、構ってオーラって…ヒドイぃ!そんなことないモン…」


上品な上辺を取り払い乱暴な言葉遣いの奏江に、もったいないなぁと思いつつ自分の事を棚に上げた千織はじゃれ合いの様な二人のやり取りの観察を楽しみ始めた。


この繰り返される日常はすでに見慣れたもので、本人はそんなことないと否定するが奏江のいる前でわざとらしく何かしらを呟くキョーコは十分甘ったれているし、そんなキョーコを叱り飛ばしながらも結局は話を聞きだす奏江がそれを助長しているのは明らかだと。

しかしながら、こんなベタベタと慣れ合うのをうっとおしいと思っていた自分は、この二人の空間に放り込まれてもそんなに不快感を感じないのだから不思議なものだ。


千織は苦笑交じりの溜息をそっと吐いて席を立ち、美容効果があるのだとキョーコが持ちこんだハーブティーを淹れる。もちろんこのお茶は女優としての美意識の高い奏江の為にキョーコが用意した物だ。嬉しいくせに、しれっと「それなら飲んであげてもいいわよ」と言い放った奏江は、なんだかんだ言って好んでこのお茶を飲む。以前千織がそれを突っ込んだら、真顔であの子の味覚とか作るモノって間違いないのよね。悔しい事に、と言っていた。事実なんだろうけれども、多分に照れ隠しが含まれてるその言い様に吹き出してしまったのは記憶に新しい。


「その独り言を止めるか、外に行くかどっちかにして!」

「ええ~?聞いてくれないの?」

「ほら見なさい!やっぱり構ってほしいんじゃない。この嘘つき!」

「でもぉ…、これってラブミー部員の私たちには重要な懸案だと思うの」


奏江に言いすがるキョーコが手にしているのはどうやらオファーを受けたらしいドラマの台本。

立ち上がってドアを指差していた奏江は、それを見て片眉を上げ渋々と言ったようにどかっと乱暴に椅子に腰を下ろした。

芝居絡みということを表向きの理由にしているんだろうけど、結局奏江はキョーコに甘いのだ。

奏江が腰を下ろしたのを見て、キョーコはぱぁっと顔を綻ばせた。

どこのバカップルよ…と内心思いつつ、千織は良い香りの立ち上るマグカップをさりげなく二人の前に置いて、自分の分は手にしたままいつもの指定席に収まった。


「キョーコさんが悩んでるのって、このドラマのこと?」


奏江よりも先に千織が口火を切った。奏江はそうよ、話しなさいよと目で言いつついれたてのハーブティーに口をつける。


「うん…、セリフで引っかかるところがあって」

「アンタねぇ…。ドラマの台本は台本通りに演じればいいんだって前に言ったじゃない。そのセリフの背景や構成を考えるのは作家の仕事でしょ?前にそれでケチつけて面倒になったこと忘れたの?」


奏江は以前あった養成所での出来事を指して、苦々しい顔をした。


「敦賀さんは演じる役柄の背景を掘り下げて考えるのは役者の仕事って言ってたし」

「それこそ、俳優によって違うんじゃないですか?どっちが正しいとか無いと思いますけど…」


対立するような先輩俳優の意見を述べるキョーコに奏江が口を開く前に、千織は口を挟んで腰を折る。

演劇論は交わしていて楽しいけれど、ことキョーコに関して件の先輩が絡むと演劇論ではない感情が織り交ざり話が明後日の方向に行くことが多いのだ。

芝居の話となれば、千織だって興味深い。なんだかんだ言って愛の欠落者3名は全員演じることを愛しているのだ。


「それで、キョーコさんは何が引っかかってるんですか?」

「これ…なんだけど」


キョーコが広げた台本は、何度もキョーコが見返しているのだろう、そのページだけ癖がついてしまっていて、比較的新しいにもかかわらず支えて無くてもそのページが閉じることはなかった。


キョーコが演じるのは主演キャラクターの友人役。

帰国子女の大学生が友人たちと過ごす一場面で、ボーイフレンドもその場に居合わせて何気ない会話を交わすシーンだった。


「…なにこれ?あんた彼氏のいる役柄はラブミー部員だからできませんとか馬鹿なこと言うの?」


なんてことないシーンだと、奏江は呆れてキョーコの顔を見た。そしてふと、新人発掘オーディションの時電話口から流れてくる謝罪と愛を囁くセリフへの反応で、悪鬼のごとく罵詈雑言を吐きケータイ電話を破壊したキョーコを思い出して止まってしまった。

ラブミー部だとか、恋愛を愚かと断言するとか、個人的な見解はともあれ、そこそこ演技の仕事を貰い始めたキョーコがまさかこの程度の場面をなぞるだけでもまだ拒否反応を示すというのだろうかと、奏江は疑問を持つ。


「恋愛要素の強いドラマでも役どころでもないし、いつも通りニコニコ笑ってこの台本通りのセリフをしゃべればいいじゃない」

「そうですよ。まあ、このセクションに所属している以上濃いめの恋愛ドラマは苦手としても、この役だと主人公との信頼や友情の方がメインでしょう?キョーコさんそれは得意じゃないですか」


チラリと奏江を見つつ千織が述べた助言に、奏江は少しだけむっとした表情を見せたがキョーコはますます申し訳なさそうに小さくなる。


「……なんなのよ」

「キョーコさん?」


しばしの沈黙の後、おずおずとキョーコの指があるセリフを指し示す。


『愛してるわ』


「「………」」


その単語だけ目にしてしばし、俯くキョーコとセリフを見比べてしまった二人だが、よくよく台本の中のその言葉の位置づけを確認してみればなんてことはない。

帰国子女のキョーコの役が、雑談の別れ際にボーイフレンドと頬は触れ合うキスを交わした後に口にするセリフだった。


「こんなの、外国人じゃよくある光景でしょ?キスって言っても頬同士が軽く触れるだけじゃない。アンタまさか、これでも破廉恥だなんだって騒ぐわけ?」

「そうじゃなくて、ハグやキスは慣れたというかなんというか…」

「じゃあ何なのよ。外国人のアイラブユーは挨拶みたいなもんだって言うじゃない」


奏江は無視したが、さらりと落とされた爆弾発言に千織は思わずじっとキョーコを見てしまった。

天然記念物的乙女のキョーコがハグやキスに慣れるっていったいどういうことだろうか?女子高生ばかりのBOX-Rの楽屋ではナツが抜けた状態であれば、ちょっとのエッチな下ネタ話でも真っ赤になるキョーコは共演者のいい玩具になっていたのに…と、千織は違和感を持つが、その割にはエグいデザインの下着を平然と手に取って購入していたキョーコの姿も見たことがあったと思い出していた。


「台本通りににっこり笑って、頬キス交わして『愛してるわ』でいいじゃない」

「ででででも…っ、あ、あ、ああああいしてる、なんて言い慣れて無くて…」


また明日、の様な軽い挨拶として帰国子女設定の役柄に当て嵌められたそのセリフ。

キョーコは頬キスはスルーして、『愛してる』の単語を口にすること自体を躊躇っているようだ。


「じゃ、練習。ほら、私相手に愛してるって言ってみなさいよ。得意でしょ」

「愛してるわー!モー子さんっ………って、そうじゃなくて!」


台詞のみならず、がばっと両手を広げて奏江に抱きつこうとしたキョーコはひらりと躱されてしゅんとするが、空を切った自分の腕を見てそれからひとりツッコミが始まる。


「……なんていうか、日本語で表現されると重いって言うか、違和感があるっていうか」


街ゆく外国人を見かければ、人目をはばからず手を繋いでキスしてたりと思わず赤面して目を逸らしたくなるようなシチュエーションが日常茶飯事なのも分かっている。でも…と、キョーコはキョーコで悩んでいるようだ。


「愛してる、なんて言葉を、こ、こ、恋人っに、軽いノリで口にするってどうしていいもんだか…」

「この場面で日本人的な感覚で『愛してる』なんて言ったら重くておかしいでしょ。さらっと流せばいいじゃない」

「でもぉ…」


キョーコはキョーコで真剣に演技のために悩んでいるようだ。

千織は色々とツッコみたいし思うところもあるが続行しているキョーコと奏江の話の腰を折ることもできず、そのまま会話に合流した。


「じゃあ帰国子女らしく、日本語訳じゃなくて英語でI love youならいいんじゃないですか?英訳しちゃえばそんなに抵抗ないかも」

「確かにね。ラブミー部って言われて死ぬほど恥ずかしかったけど、これが日本語訳の『私を愛して』とか『愛され隊』だったら所属も養成所の学費の兼ね合いがあっても絶対入らなかったわ…」


それくらいのセリフのアレンジなら監督に提案してみてもいいんじゃないですか?と奏江と千織は台本に目を落としながらキョーコに助言をしている。


「………?キョーコさん?」


ふと、2人からの提案にキョーコからの反応が途切れて発生した間に、違和感を覚えて千織は顔を上げた。


「……」


見上げたキョーコの表情は時が止まったかのように停止していて、千織はひらひらとキョーコの眼前で手を振ってみた。

挙動不審で思いもかけない反応を素のキョーコがすることは共演する中で知って慣れすら出てきたが、脈絡なく長時間フリーズするキョーコに心配も募る。

反応に困り千織は隣にいる奏江にどうしたものかと視線を送るが、奏江ははぁ~~~と心底呆れ顔で大きなため息をついていた。


「…?」


自分の顔を見て疑問符を浮かべた千織に、奏江は無言でくいっと顎でキョーコの方を指示した。

『見てなさい、じきに分かるから』と雄弁に語る奏江の表情に、疑問は解消されないままだったが千織はキョーコに視線を戻した。


未だに止まったままのキョーコの表情だが、よくよく見れば色が違う。

ジワジワと首筋から耳にかけて朱色が昇って行く。


それは楽屋でコイバナでからかわれたキョーコが顔を真っ赤にするときに目にする色だけども、それならなぜ瞳が恋する乙女のように潤んでいるのだろうか?

見たことないキョーコの表情の変化に千織は絶句してしまった。


「……あ、アイ…ラブユーだなんて…」


英語でなんて…と困ったようにおろおろと視線を彷徨わせるキョーコ。

奏江はふんっと荒く鼻息を吐き出だした。


「まあ、ほら。私たちはどうせ愛の欠落者だし?」


めんどくさそうに、ため息が荒い鼻息になるくらいの奏江に、もしかしてもしかしなくてもそういうこと?と思った千織は思わずごくりと唾を飲み込んでキョーコの反応を伺う。

頬をバラ色に染めて恥じ入るキョーコは同性の目から見ても妙になまめかしかった。


「そう言った事は恋愛ドラマもバリバリこなすアンタの尊敬する先輩にでも相談してみたらどう?私の意見よりいっつも先輩の意見を聞いて役作りしてるんでしょ」


相手を暴露する奏江の言葉に、驚きつつも千織はキョーコの反応から目が離せない。

これ以上の、どんな乙女顔を愛の欠落者1号は持っているのだろうか?

というか、こんな反応が出来ればキョーコはその烙印を返上できるんじゃないだろうかと考えていた千織の目の前で、千織の想像を裏切るキョーコの表情が展開された。


「な…っ、なんてことを言うのよ!!モー子さんっっ!!!!!」


上気した朱色は一気にデットブルーに急降下し、その後今度は怒りで青筋が立った般若のキョーコがそこにいた。



*****


結局部室での演技相談は結論が出ないままで、セツカのヘアメイクを施されつつキョーコは折り目がついたその台本を見てはため息をついていた。


「どぉ~したの、キョーコちゃん。そんな溜息をついて!幸せが逃げて行っちゃうでしょ」

「あ!いえ。…次のドラマでのセリフの感情がうまく掴めなくって」


テンに台本を覗き込まれ、キョーコは素直に奏江と千織に話したのと同様の事を話しだしたのだ。


「そういう事はやっぱり蓮ちゃんに聞いてみたら?蓮ちゃん英語出来るから和訳と英訳のニュアンスの違いとかそう言うのもアドバイスしてくれるわよ?」

「何?最上さん何か悩み事でもあるの?」


そう会話を交わしていると、キョーコより遅れて車に乗り込んできた蓮が姿を現し、キョーコは思わず閉口してしまった。

その後はセツカのメイクに移ったテンにより、自ら口を開くことができず、キョーコの相談内容はテンの口から蓮に伝わってしまったのだ。





『お前は日系の血が濃く出たんだな』

『は…?』


ミス・ジュリ―ウッズの移動美容室で変身を終えた蓮とキョーコは、カインとセツカとしてホテルの一室にいた。


『日本人は言葉にして感情を伝えるのが下手くそだ』


脈絡なく振られた内容にキョーコは疑問を持つが、セツカとしてカインに答える。


『確かにあのノーと言えない優柔不断っぷりにはどうかと思うけど。ヘタっていうか奥ゆかしいって言うんでしょ?文化だって言う人もいるし』

『ちゃんと伝えられないんだから同じだな。隠すことが美徳だと思っている、おかしな話だ』

『それがどうしてアタシにつながるの?アタシ、兄さん以外の人から嫌なことを我慢して受けるほど暇じゃないわよ』


下手くそだとカインが言う日本人。撮影の最中もカインやセツカは日本を小馬鹿にする発言を口にしている。そんな日本人の血が濃く出ていると最愛の兄から言われれば、ここは怒っていいところのはずだとキョーコはむっとした表情でカインを見上げた。


暗にこれは日系とはいえイギリス人設定の雪花・ヒールとしては役作りとして失格という事なんだろうか?


キョーコがそんなことを考えていたら、カインが一歩セツカに近づいた。


『…I love you』


大きな手が項の髪を掻きあげて、不意打ちで耳元で囁かれた。



瞬間、キョーコの脳裏には抱きしめられて囁かれて、頬に込み上げた熱を抑えきれなかったあの時の光景が蘇る。


―――…I love you…―――


確かにあの時、耳元に吹き込まれた言葉はそれだった。


―――…愛してる…―――


いかに英語が堪能であれ、日本人のキョーコの頭はその言葉を日本語訳してその意味を認識したのだ。



『……っ!!』


セツカの仮面がはがれかけてかぁっと頬に血が上る。それをぐっと抑え込んで、キョーコは声だけはセツカを保って口を開いた。


『イチイチ言葉にしなくたって解ってる!』


セツは1に兄さん、2に兄さん、3、4も5も兄さんの重度のブラコンだ。スタッフの前でカップルつなぎだってするし、抱きしめられても肩を抱かれても腰を抱かれても平然と見せつける様に行動してきたというのに、一体何が不満なのだろう?


カインがセツカに対しての言葉と分かっていても、つい顔を出す中の最上キョーコの反応を恨めしく思う。

そうはいっても取り戻せたのは口調だけ。頬に上がった熱と赤みはそう簡単に引きはしない。キョーコは何とか顔を見られまいと考えるが、一歩遅かった。


『そう言うところが…だ』


するりとセツカから離れたカインは、真っ赤な顔を覗き込んでにやりと口角を上げた。

『英語圏ではI love youなんて挨拶と同じなのにな』

『……っ』

『別に日本人が軽々しく口にできない『愛している』とイコールじゃないのに』

『………知ってるわ』

『でも…』

『…なによっ』


そっぽを向いた赤みの残るセツカの頬を撫でて、カインがクツクツと笑う。


「この『I love you』はその意味でいいよ?」


「……へっ…?」


急に投げかけられた日本語と口調にキョーコも思わず日本語で振り返った。

そこにはカインの表情ではなく、クスクスと柔らかな笑みをこぼす蓮の姿があった。


「『I love you』も『愛してる』も違和感なく受け取れるように、しばらくは挨拶代わりに伝えるから、慣れてね?」

「え…あのっ…、つ、敦賀さん???」

「ほら、そうすればあのドラマのあのシーンも違和感なく演じられるんじゃない?」


そう笑う蓮に、からかわれたと悟るとキョーコは先ほどとは別の意味で顔に熱が昇った。


「ひ、ヒドイ・・・っ!からかったんですね!!」


セツカが抜け切っていないせいかポカポカと拳を振り上げるキョーコを、蓮は笑って受け止めてやっぱり聞き流されているかと苦笑した。


「だから、この『I love you』は日本語訳の意味でいいっていっただろう?」

「愛してるって、それだけで恥ずかしいです!」


「だから、重たくて日本人が口にするのが苦手な最重量級の『I love you』だって言ってるだろう?」


蓮の言った意味をちゃんと受け止めているようで受け止めていないキョーコに蓮はダメ押しを口にした。


「は……?」


「最上さん、好きだよ。愛してる。君が理解するまで、ずっと言おうか?」



その後、キョーコが真っ赤な顔で泣いて謝るまで蓮はキョーコを抱きしめて耳元で愛の言葉を囁きつづけた。


~~~~~

ライトな告白・・・。

そしてあの空白のセリフが『I love you』だったら・・・で考えていた発掘品。


纏まってなくてダメだなぁw