大企業では、要求通りに賃金を上げることができるかもしれないが、中小企業ではどうなのか。余裕があるのかどうか疑問だ。
約30年間、労働者の実質賃金の上昇が見られなかった。人々がデフレを求めていたためモノの値段も上がらなかった。世のなかは、デフレスパイラルに陥っていたようだ。
コロナ禍後のコロナ補助金が終了後、各種の問題が顕在化してきた。
ほんのしばらく数年前までは、日本がこんなに貧しい国になってしまうとは思わなかった。
補助金や円安などで見かけだけの好調を演出して、ぬるま湯にひたっていたまたたく間に日本がアジアでの中の貧しい国になってしまった。
「プア・ジャパン」の象徴は、外国人旅行客の急増だと野口悠紀雄さん。
かつて1980年代の日本人は、海外に旅行する豊かな経済力を手に入れ、欧米の豪華なホテルに滞在し、高価な買い物を楽しんでいたのであった。
翻って、現在の日本では、日本の観光地の価値が高まったために外国人が高いお金を払って来るのではなく、日本での旅行や買い物が安くなったためであった。
いつか日本は、G7などで先進国の一員としての座席がなくなるのではないかと私は危惧している。それを防ぐための処方箋がおわりに書かれてあったのはひとつの救いだった。
295P
生産性の向上のためには、ジョブ型雇用の導入が必要だ。それを機能させるためには、高度専門家が一つの企業に縛り付けられるのではなく転職を繰り返していくことが必要だ。日本社会停滞の原因は、(補助金行政、報酬体系、退職金制度等)日本社会の基本的な構造にある。それを改革しない限り、日本は豊かさを取り戻すことはできないだろう。
悲観的な言葉が賑やかにあったので3点引用しておきたい。
・アメリカの経営者イーロン・マスク氏は、「出生率が死亡率を上回るような変化がない限り、日本はいずれ消滅するだろう」とツイッターに投稿した。日本は、それより先に収入がなくなるために消滅しそうだ。92p
・賃金上昇率が物価上昇率に追いつかなかったので、実質賃金が下落した。未曽有の春闘賃上げ率と喜んでいて良い状態ではなく、2022年の物価高騰によって、労働者は損をしたことになる。111p
・健康保険証のマイナンバーカードへの切り替えには問題が多い。様々な機能があるので、紛失したときの問題が多い。実印を持ち歩くようなものだ。マイナンバーカードの使いみちがない。印鑑証明とは、アナログの本人確認手段である。アナログの本人確認のための手段を最先端のデジタル手段で取得するのは、自己矛盾に陥っているとしか思えない。印鑑証明など使わなくても、マイナンバーカードだけでさまざまな場面での本人証明をできるようにすることが本来のデジタル化ではないか。205p
<目次>
はじめに 補助金や円安でなく、人材の育成を
第1章 気がつけば、「プア・ジャパン」
第2章 昔はこうでなかった
第3章 これから賃金は上がるのか?
第4章 増大する財政需要と政治家の無責任
第5章 デジタル化の遅れが日本の遅れの根本原因
第6章 高度人材を日本に確保できるか?
第7章 日本再生のエンジンは、デジタル人材
図表目次
索引
1940年、東京生まれ。63年、東京大学工学部卒業。64年、大蔵省入省。72年、エール大学でPh.D.(経済学博士号)を取得。一橋大学教授、東京大学教授(先端経済工学研究センター長)、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを歴任。一橋大学名誉教授。専攻は日本経済論。近著に『日本が先進国から脱落する日』(プレジデント社、岡倉天心賞)ほか多数









