孔子の思想が、死後どのように神格化され、信仰の対象へと変わっていったのか―その過程を中国思想史の視点から丁寧に解き明かす一冊。「君子」「聖人」「神」へと高められていく道筋が、歴史的事実と思想的背景の双方からわかりやすく述べられていた。
「学んで時に之を習う」「信無くんば立たず」「過ちて改めざる、是れを過ちと謂う」「己の欲せざる所は、人に施すこと勿かれ」「温故知新」「啓発・敬遠・不惑」など、論語の言葉は、私たちの日常の中に自然に溶け込み、当たり前のように使われている。短い言葉のなかに深い意味が宿り、その背景を知ると、なるほどと膝を打ちたくなる。
なぜ二千年以上も前の孔子の言葉が、いまなお尊重され、生き続けているのか。これまで漠然と不思議に思っていたが、本書を読むことでその理由の一端が見えてきた。
32ページ 孔子の神格化の要因
・生前の素質・才能・道徳性、そして成し遂げた業績
・不遇の最期を遂げた人物への鎮魂の念という「悲劇性」
・神格化を加速し、後世にわたって維持・発展させるためのシステム (建築物・史跡・画像・祭祀儀礼・物語・教育・宣伝など)
こうした複合的な要因が重なり、孔子は「思想家」から「聖人」へ、さらに「神」へと位置づけられていったことがよく理解できた。
■目次
はじめに
序章 人が「神」になるとはどういうことか
第一章 孔子はもとから「神」の素養をもっていたのか
第二章 孔子の思想はなぜ「中華の背骨」となったのか
第三章 孔子の聖人化はいつから始まったのか
第四章 儒学はいかにして国家教学になったのか
第五章 儒学はなぜ「朱子学」「陽明学」を生んだのか
第六章 孔子は日本でどのように受容されたのか
第七章 孔子の教えはどこに向かうのか
おわりに
■著者紹介
湯浅邦弘さん
1957年、島根県生まれ。大阪大学名誉教授・立命館大学教授。博士(文学)。専攻は中国思想史。
