主人公は58歳の専業主婦・陽子さん。夫の和彦は男尊女卑的な価値観を持ち、息子の洸太郎は甘やかされて育ったため俺様気質でわがまま。
洸太郎は彼女のみやちゃんに振られるが、その理由は「母親への態度が横柄すぎる」と判断されたからだった。大きな事件は起きないものの、陽子さんと同年代の読者なら共感できる場面が多いだろう。
陽子さんは、夫の顔色をうかがい黒子として徹してきた30年間を後悔する。気づかないまま一生を終える人もいるが、気づいたその瞬間から変えていける。夫婦は、相手を思いやりながら言いたいことを言い合える関係が理想だ。陽子さんが自分の思いを夫に伝え始めると、家の雰囲気も変わり、彼女自身もいきいきと元気を取り戻していく。
洸太郎が連れてきた彼女・みやちゃんとの出会いをきっかけに、陽子さんは自分の生き方を見つめ直す。これまで続けてきたガーデニングの経験を活かし、お客様に頼られる姿は、水を得た魚のように快活で、どこか神々しく輝く仏様のようでもある。
陽子さんを見ていると、夫が安心して外で働けたのは、家をしっかり守ってくれた妻の存在があったからだと気づかされる。夫は「自分が稼いできた」と思いがちだが、妻が献身的に家事や育児を担ってきたからこそ成り立っていたのだ。
夫婦はお互いに助け合い、寄り添って生きていくもの。家事も子育ても妻だけに任せるのではなく、二人で担うべきだ。病気のときや食事づくりなど、負担が偏る時期もあるが、そのときは別の場面で支え合えばよい。
大切なのは、互いへの感謝と、自分の考えを伝え合うための話し合いだと思う。
■目次
Chapter1〜7
■著者紹介
山内マリコさん
1980年富山県生まれ。小説家。2012年『ここは退屈迎えに来て』(幻冬舎)で地方都市に生きる若者のリアルを描き鮮烈なデビューを飾る。
