本書では、日本の成り立ちに深く関わる神話の中心に位置づけられる伊勢神宮、出雲大社、高千穂を「日本三大聖地」として紹介している。天照大神を祀る伊勢神宮をはじめ、古代から語り継がれてきた神々の物語が息づく場所は、いまもなお多くの人を惹きつけてやまない。
著者は「聖地とは、特別な物語があり、広く共有されている場所」と定義する。日本には、富士山のような霊峰をはじめ、険しい山、川、滝、入江、巨木、巨石など、自然そのものが物語を宿す場所が数多く存在する。
古来より日本人はアニミズム(精霊信仰)を持ち、「ありとあらゆるものに霊魂が宿る」と考えてきた。特異な自然物に神々が宿ると信じられ、そこから神話や伝説が生まれ、やがて聖地として人々の心に根づいていった――本書はその流れを図解とイラストでわかりやすく示している。
全国47都道府県、延べ150カ所以上の聖地が紹介されており、地理・歴史・信仰・文化が一体となった「日本の精神風景」を俯瞰できる構成になっている。
■感想
これまで伊勢神宮や出雲大社など、いくつかの聖地を参拝してきた。
そのたびに感じるのは、説明しようのない「気の引き締まり」である。鳥居をくぐる瞬間、空気の密度が変わるような感覚があり、背筋が自然と伸びる。あれは単なる観光地では決して味わえない、場所そのものが持つ力だと思う。
聖地で手を合わせていると、自分がいまの日本人として何をなすべきなのか、どんな姿勢で生きていくのか、静かに問いかけられているような気がする。
「子孫に何を残していくのか」
「自分はどんな生き方を選びたいのか」
そうした問いが、境内の静けさの中でふっと浮かび上がってくる。
読み進めるうちに、こうした感覚は決して個人的なものではなく、日本人が古来より自然や神話とともに生きてきた歴史の延長線上にあるのだと気づかされる。
聖地とは、単に「神聖な場所」ではなく、私たちの精神の奥底に触れてくる場所なのだと思う。
ぼくにとって聖地とは、「日本人として生まれたからこそ、参りたいと思う場所」であり、「気づけば引き寄せられてしまう土地」だ。
その土地に立つことで、自分の根っこ――文化、歴史、価値観、祈り――が静かに確かめられる。
本書は、その感覚を言葉と図解で丁寧に説明してくれる一冊だった。
■目次
はじめに
1章 日本三大聖地
2章 山の聖地
3章 岩石・樹木の聖地
4章 水辺の聖地
5章 神々や英雄の聖地
6章 霊験あらたかな聖地
7章 聖地巡礼
■著者等紹介
岡本亮輔さん
1979年東京生まれ。筑波大学大学院人文社会科学研究科修了。博士(文学)。
北海道大学大学院国際広報メディア・観光学院准教授などを経て、同教授。
専攻は宗教学と観光学。
【No2106】日本の聖地解剖図鑑 聖地の成り立ちを知れば日本の今と昔がわかる えいとえふ/著 岡本 亮輔/監修 エクスナレッジ(2025/05)
