NHKドラマ『税金で買った本』を見ていることがきっかけで、図書館を題材にしたマンガに関心が向きました。
普段マンガを読まない自分が、マンガコーナーで偶然このシリーズを手に取り、気づけば7巻まで一気に読み進めてしまったのは、働く者として描写のリアリティに強く惹かれたからだと思います。
本作は、図書館の根幹業務である レファレンス・サービス を丁寧に描いた作品です。
蔵書点検で職員全員が汗だくになりながら書庫を確認する場面、専門的な相談を適切な機関につなぐ レフェラル・サービス、ダイバーシティ、多文化共生、ディスレクシア、郷土史研究など、実際の図書館で日々行われている業務が細やかに描かれています。
司書としてこれらの描写は「マンガ的誇張」ではなく、むしろ図書館の現場をよく取材した上で描かれた“実務のリアル”だと感じます。
利用者の相談は一件一件が異なり、時に人生の岐路に関わることもある。
その責任の重さと、うまく役立てたときの喜びが、この作品には確かに息づいています。
特に印象に残ったのは、5巻の「回想法」を扱ったエピソードです。
かつて走ることを断念したおばあちゃんは、病気で立ち上がることも難しい状況にあります。そんな彼女を元気づけたいと、葵ひなこや司書仲間たちは、30代の頃にお産で人助けをした新聞記事を探し出し、回想法を用いて寄り添います。さらに、同じように走ることを途中で諦めた経験を持つ女性介護士がハーフマラソンに挑戦し、その瞬間におばあちゃんにも小さな奇跡が起きる――思わず目が潤んでしまう場面でした。
葵ひなこたちが、利用者の過去の新聞記事を探し出し、回想法を用いて寄り添う姿は、図書館が“情報提供の場”であると同時に“人の心に寄り添う場”でもあることを思い出させてくれました。
図書館員が関わることで、利用者の心に小さな変化が生まれる――その瞬間の尊さに、思わず胸が熱くなったのです。
主人公の葵ひなこは、少しおせっかいで、熱心すぎて空回りすることもあるけれど、利用者の無意識のニーズを察し、寄り添い、涙するほど真剣に向き合う司書です。
その姿は、図書館で働く人にとっても初心を思い出させてくれる存在です。
『その人が前に進めるお手伝いを“本を渡す”という仕事を通じてできる。誰かのために役立てる事がうれしくて、これからも本を探し調べていきたい』
図書館のレファレンスは、利用者の人生を左右することもある。
本を通じて誰かの役に立つという、司書の仕事の崇高さを改めて感じました。
この時期にこの作品に出会えたことは、自分をもう一度見つめ直す良い機会になりました。
この本に出会えて、本当に良かったと思います。
著者紹介
埜納タオさん
漫画家・イラストレーター。講談社mimi&kiss新人漫画賞入選でデビュー。広島県福山市生まれ。『図書館は誰にとっても身近な存在でいつもあたたかく迎えてくれる場所であってほしい。そんなことを思いながら描きました。』
