日本は世界有数の地震多発国であり、地震そのものを避けることはできません。しかし、被害をできるだけ遠ざける工夫や、被害を最小限に抑える備えは確実にできます。本書は、家がなぜ倒壊するのか、どのようにすれば被災を避けられるのかを、建築の専門家がわかりやすく示した一冊でした。
著者が特に警鐘を鳴らすのは、高度成長期や戦後復興期に、東京オリンピック・大阪万博の需要に合わせて突貫工事で建てられた住宅です。これらは耐震性が十分でないものが多く、まずは耐震診断を受けることが重要だと強調されています。
耐震基準の変遷にも触れられており、
1981年の新耐震基準:震度5強〜6程度に耐えることを想定
2000年以降の基準:震度6強〜7でも倒壊しにくい構造へ
といった指標が示されます。宮城県沖地震や阪神・淡路大震災などの甚大な被害を契機に、基準が強化されてきた歴史がわかります。
また、家の倒壊だけでなく、揺れの後に起こる二次災害への備えも欠かせません。
感電ブレーカーの設置、ガラス飛散防止フィルム、家具の固定や配置の工夫など、予算が少ないものからでも始められる対策が多数紹介されており、「できることから一つずつ」という姿勢の大切さを感じました。
目次
はじめに 日本列島は「常に震えている」という現実
1 あなたの家は「何年」に建てられましたか?―「危ない家」が残り続ける社会の裏側
2 見た目と実例でわかる「倒れやすい家」―形・開口・屋根・地盤の危険信号
3 家の中で死なないために―家具転倒・ガラス破片・生き埋めのリスク
4 揺れの後に来る災厄―津波・余震・火災から命を守る
5 災害関連死を防ぐ「TBK」の知恵―避難所の雑魚寝はなぜ危険なのか
6 家だけでは助からない―道路・延焼・緑で考える街の防災
7 集合住宅はどこが危ないか―アパート・RC・高層マンションの地震リスク
8 徹底解剖!あの「マンガの家」は安全?―野原家、野比家、さくら家、磯野家までを耐震診断
9 地震対策と被災後の暮らしをつなぐ―耐震工事、連絡、備蓄、ペット、在宅避難の実践
あとがき 1%の備えが、あなたの大切な人の未来を守る
著者紹介
森山高至さん
一級建築士、建築エコノミスト。1965年岡山県生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業後、齋藤裕建築研究所に勤務。独立後は戸建住宅から大型施設まで幅広い設計監理に携わる。さらに早稲田大学大学院政治経済学部で経済学を修め、建築と経済の両分野に精通した立場から自治体の街づくりや公共施設のコンサルティングを行う。難解な建築の話題を一般向けに解説する識者として、テレビ・ラジオでも活躍。
