本書で著者の真殿氏は、青山透子氏が唱える「自衛隊による撃墜説」について、その論拠を徹底的に検証し、非科学性と事実誤認を明らかにしている。
青山透子さんの主張――「日航123便は海上自衛隊のミサイルによって撃墜された」という説――は、森永卓郎さんの紹介で以前から知っていた。しかし、日航機が御巣鷹山に墜落し多数の犠牲者が出たという事実は揺るぎないものの、その原因については長く理解が難しいままであった。
■青山氏の主張に対する真殿氏の評価
p.210
青山氏の主張は、科学的調査の体を全く為していない。都合の良い情報のみを都合よく解釈し、客観的事実を無視してつなぎ合わせたものは、「科学」や「論」と呼ぶにはふさわしくない。
p.263
私(真殿)にとって青山氏の仮説は「陰謀論」と呼ぶに値せず、「デタラメ(出鱈目)」という言葉の方がしっくりくる。
■両者の主張の比較
どちらか一方が絶対に正しいというよりも、両者の主張はまるで「盾」と「矛」のように正面から食い違っている。(一部を抜粋)
青山氏「護衛艦まつゆきが訓練用ミサイル(訓練弾)を発射した」
真殿氏「事故当日の8月12日、まつゆきは豊洲の石川島播磨重工業工場に停泊しており、発射できる状態ではなかった」
青山氏「標的機が日航機の垂直尾翼に当たった」
真殿氏「まつゆきは標的機を発射・管制できる艦ではなく、高速飛行する旅客機に命中させることは不可能。生存者も機体の揺れを感じておらず、機首方位も変化していないため衝突の可能性は低い」
青山氏「訓練弾は開発中だったSSM-1である」
真殿氏「SSM-1は対艦ミサイルであり、当時艦上発射型は未開発。まつゆきにも装備されていなかったため発射は不可能」
■真殿氏が推定する事故原因(p.253・257)
異常発生前、機体は水平飛行で姿勢に問題はなく、操縦ミスによる過大荷重は考えにくい。生存者も揺れを感じていない。機首方位が一定であることから衝突の可能性も低い。
→ 機体の金属疲労・亀裂・腐食など、構造劣化が原因である可能性が高い。
事故機は「しりもち事故」により後部に大きな荷重がかかり、ボーイング社の修理が杜撰だった可能性がある。圧力隔壁だけでなく、後部構造にも修理ミスや不具合があったと推察される。
■事故原因をめぐる議論をどう受け止めるか
撃墜説のような陰謀論が存在するかどうかにかかわらず、また主張が平行線のままであったとしても、日航機が墜落し多くの命が失われた事実は変わらない。
尊い命が奪われるような事態を二度と起こしてはならない。そのためにも、航空機の整備・修理におけるミスは決して許されない。今回の事故を大きな「他山の石」として深く反省し、関係者が今後も安全確保に全力で取り組むことを願いたい。
目次
はじめに
第1章:日航123便墜落事故とは何だったのか
第2章:青山透子氏の「撃墜説」はどのようなものか
第3章:「海上自衛隊ミサイル撃墜説」疑惑のはじまり
第4章:護衛艦まつゆきはどこで何をしていたのか
第5章:「存在しないミサイル」の波紋
第6章:「日航123便機内写真」の新事実
第7章:「海上自衛隊ミサイル撃墜説」を覆す
第8章:事故から40年、驚くべき新説の登場
第9章:事故原因の真相
終章:拡散する陰謀論に抗う
青山透子氏の主張と本書の主張の比較
謝辞
参考・引用文献
著者等紹介
真殿知彦さん
1966年、千葉県生まれ。89年に防衛大学校を卒業後、海上自衛官に任官。2002年に筑波大学大学院地域研究研究科修士課程を修了。その後、アジア太平洋安全保障研究センター(ハワイ)、NATO国防大学(ローマ)の課程修了。第二航空群司令、海上自衛隊幹部学校長、海上幕僚副長、横須賀地方総監などを歴任。25年12月に退官
【No2040】日航123便墜落「撃墜説」の真相 海上自衛隊元最高幹部が解き明かす 真殿知彦 PHP研究所(2026/02)
