人は老い、そして必ず死を迎える。もし延命治療で苦しみながら最期を迎えるのだとしたら、病院ではなく、自宅で静かに眠るように逝きたいと思う。
家族と同じ空間で過ごし、看取られることができれば、家族は「死」をより身近に感じるだろう。「ありがとう、いい人生だったよ」と穏やかに旅立つ姿を見れば、死生観は大きく変わる。死は、そこまで恐れるものではないのかもしれない。
歳を重ねると、治療が必ずしも最善とは限らない。治療したからといって長生きできるとは言えず、治療中は入院や生活制限が伴う。好きなものを食べられず、行きたい場所にも行けない。
人は「がんが大きくなって死ぬ」のではなく、老いて弱っていき、やがて老衰で亡くなるのだと著者は語る。
信頼できる在宅医を見つけるのは簡単ではないが、本書には、がん患者を中心とした緩和ケアの経験、延命治療を望まない患者が穏やかに亡くなるまでの過程、そして家族の姿が丁寧に記されている。
「病は気から」という言葉があるように、気持ちが大きな要因になることを改めて感じた。
● 心に残った箇所(4ページ)
歩くために必要な力は、実は「根性」と「気力」です。決して筋力だけの問題ではなく、自分の頑張りで歩くことができるのです。「がんばれる」ことは気力があること、つまり脳の若さです。
歩けるうちは、人は死にません。人間は気力によって、弱っていくのを遅らせることができる、余命を延ばせるのです。
歩くという行為が、単なる身体能力ではなく「生きる力」そのものだと示されている。老いと向き合う上で、気力の重要性を強く感じた。
✦ 目次
はじめに
第一章 歩ける人は死なない
第二章 がんばって背筋を伸ばそう
第三章 人は病気ではなく老化して死ぬ
第四章 「がんと闘うな」はほんとうか?
第五章 一人でも、いや一人のほうが大往生できます
おわりに
✦ 著者紹介
萬田緑平さん
「緩和ケア 萬田診療所」院長。1964年生まれ。群馬大学医学部卒業後、同大学附属病院第一外科に勤務し、手術・抗がん剤治療・胃ろう造設などに携わる中で医療のあり方に疑問を抱く。
2008年から9年間、緩和ケア診療所に勤務し、在宅緩和ケア医として2000人以上の看取りに関わる。現在は自身の診療所を運営しながら、「最期まで目一杯生きる」をテーマに全国で年間50回以上の講演を行っている。
