将来に向けた「お金」への危機感は、年々強まっている。
お金を多く稼ぐ人が“偉い”とされる風潮が広がる一方で、どれほど資金があっても、それを動かすヒトがいなければモノは作れず、サービスも成り立たない。社会は人の営みで支えられているという当たり前の事実が、いつの間にか見えにくくなっている。
数十年前から少子化対策が叫ばれてきたにもかかわらず、人手不足の問題は放置されたままだ。
金至上主義や「自分さえよければいい」という空気が強まり、社会全体の脆さが露呈している。
著者は、こうした社会の危機を“他人事”ではなく“自分事”として捉える必要性を説く。
人と人が助け合い、不安を共有できる仲間がいれば、お金にまつわる孤独感は確実に薄まる――その視点が本書の核となっている。
●印象に残った一節(p.250)
お金の不安は孤独だ。
しかし本当に私たちを苦しめるのは、不安そのものではない。
その不安をたったひとりで抱え込んでしまうことだ。
生きている限り不安は消えない。
けれど、不安を分かち合い、ともに考える仲間の存在を感じられれば、そこに希望が生まれる――この言葉は、今の社会に必要なメッセージだと感じた。
目次
はじめに どうして、お金の不安が増えるのか
第一部 整理する―「外」に侵されない「内」の軸(その不安は誰かのビジネス―焦りを生む空気からどう抜け出すのか?投資とギャンブルの境界線―成功者を真似てもなぜうまくいかないのか?)
第二部 支度する―「内」に蓄える資産(「会社に守られる」という幻想―労働と投資、報われるのはどちらか?愛と仲間とお金の勢力図―お金以外の何に頼ればいいのか?)
第三部 直視する―変えられない「外」の現実(「あなたのせい」にされた人口問題―なぜ「稼く人が偉い」と思われるのか?「お金さえあれば」の終焉―いつまでお金に支配されるのか?)
第四部 協力する―「内」から「外」を動かす可能性(「仕事を奪う」が投資の出発点―どうすれば仕事を減らせるのか?「子どもの絶望」に見えた希望―“大人”の常識はこれからも通用するのか?)
おわりに
参考文献
著者等紹介
田内学さん
社会的金融教育家。お金の向こう研究所代表。2003年東京大学大学院情報理工学系研究科修士課程修了後、ゴールドマン・サックス証券株式会社に入社。日本国債、円金利デリバティブ、長期為替などのトレーディングに従事。日本銀行による金利指標改革にも携わる。2019年に退職し、執筆・講演活動を通じて「お金と社会の関係」を伝える活動を始める。
【No2021】お金の不安という幻想 一生働く時代で希望をつかむ8つの視点 田内 学 朝日新聞出版(2025/10)
