「他人と過去は変えられない。しかし、自分と未来は変えられる」
体調がすっきりしない、身体のどこかに違和感がある、頑張りたいのに頑張れない――そんな不定愁訴のような症状を経験したことがあります。
私たちは社会の中で生きている以上、どこかで生きづらさを感じ、悩みや葛藤を抱えるのは自然なことなのだと思います。
これまで、考え方や物の見方を変える、認知のゆがみを正す、ポジティブに捉える、良い面を見る――といった心理学や自己啓発のアプローチをよく目にしてきました。しかし、それだけで本当に解決できるのでしょうか。
たとえば、泣きたいときには泣く、エンプティチェアで抑えていた怒りを表現する、サードプレイスを持つ、無批判に受け入れてきた価値観を見直す、デジタルデトックスをする、腹式呼吸や深呼吸をする、自然や動物に触れる、何もしない時間をつくる、プロのカウンセラーに話を聞いてもらう……。
こうした行動や思考のヒントを与えてくれるのが本書であり、「ありのままの自分」で人とつながり、社会の中で自分らしく生きるための処方箋が示されています。医師の診断を受けるほどではないけれど、生きづらさや心身の不調を抱える人に向けたメンタルヘルスの一冊です。
特に印象に残ったのは、「その人が適応できない環境にいるからこそ、身体に不調が出るのは当たり前であり、それは自分を守るための力でもある」という視点でした。
それが“心を病む力”、つまり「生きようとする力」なのだと腑に落ちました。
p.125 より
自律神経の状態に応じて生まれる生理反応や感情・思考の変化は、性格やメンタルの強さ・弱さが原因ではありません。
生まれつき攻撃的な人、心配性な人、ジャッジばかりする人、完璧主義者がいるのではなく、環境との関係性によって自律神経レベルで起きている反応にすぎないのです。
生の脅威を感じる環境に長く身を置けば、人は心身に不調をきたすようにできています。それこそが「心を病む力」であり、身体の活動を最小限に抑えて命を守ろうとする働きでもあります。
目次
はじめに
イントロダクション
序章 生きづらいのは誰のせい? 社会と人間関係への「過剰適応」
第1章 私たちは「生きづらさを感じて当たり前」の世界を生きている
第2章 生きづらさを生む心のメカニズム
第3章 身体で感じる生きづらさと自律神経
第4章 過剰適応から自分の心身への適応へ
第5章 見失った自分を取り戻すための処方箋
第6章 社会との関係を再構築するための処方箋
参考文献
おわりに
著者紹介
上谷美礼さん
千葉大学医学部卒。労働衛生コンサルタント、公認心理師、医学博士。産業医として独立し、延べ1万人以上の面談・カウンセリングを実施。アドラー心理学、ゲシュタルト療法、ポリヴェーガル理論を専門とする。
【No2014】心を病む力 生きづらさから始まる人生の再構築 上谷美礼 東洋経済新報社(2025/09)
