安積係長を中心に、速水小隊長、佐治係長、相楽係長、水野をはじめとする部下たちが脇を固める。
それぞれが個性を持ち、人間味に触れられるため、どの短編を読んでも飽きがこない安定した面白さがある。
トクリュウ、ロマンス詐欺、モンスターペアレント、推し活など、近年の犯罪動向や社会の変化を題材にしつつ、人の機微を丁寧にすくい取っていて読みやすかった。
部長や課長といった役職に就けば、その立場にふさわしい人物像へと自然に変わっていくように、長く警察官であり続けることで、立ち居振る舞いや雰囲気が“警察官らしさ”を形づくっていくのだろう。
p.63
安積は言う。
「警察官らしさというのは、髪型や服装ではないだろう。おそらく、立ち姿やきびきびとした行動とか、目つきとか、そうしたすべての要素によって生まれる印象なんだ」
「そうだな。俺たちは目つきが悪いと言われるからな」
目次
「黄落」安積の先輩の退職にあたっての心残り
「心得」署員のファッション
「社交」職員のコミュニケーション力
「軋轢」鑑識 vs. 強行班
「我慢」捜査一課・佐治係長への不満
「願望」ロマンス詐欺
「取説」取説・マニュアルを読む派と読まない派
「夕凪」地域課の緊配に協力
「憂慮」教師へのモンスターペアレント
「明鏡」芸能人に会わせる詐欺と恐喝
著者紹介
今野敏さん
1955年北海道生まれ。
上智大学在学中の1978年に『怪物が街にやってくる』で問題小説新人賞を受賞。
卒業後、レコード会社勤務を経て専業作家に。
2006年『隠蔽捜査』で吉川英治文学新人賞、2008年『果断 隠蔽捜査2』で山本周五郎賞・日本推理作家協会賞を受賞。
2017年「隠蔽捜査」シリーズで吉川英治文庫賞、2023年に日本ミステリー文学大賞を受賞。
