一穂ミチ | 朝活読書愛好家 シモマッキ―の読書感想文的なブログ~Dialogue~

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読書とは――著者や主人公、偉人、歴史、そして自分自身との、非日常の中で交わす対話。
出会えた著者を応援し、
本の楽しさ・面白さ・大切さを伝えていきたい。
一冊とのご縁が、人生を照らす光になる。
そんな奇跡を信じて、ページをめくり続けています。

タクシー運転手の川西青吾が仕事を終えて帰宅すると、そこにいるはずの恋人・中園多実の姿がなかった。翌日になっても戻らず、不安が募る中、青吾のもとに「多実が見知らぬ男性・出口波留彦と五島列島の遠鹿島で海難事故に遭い、行方不明になった」という知らせが届く。

事故の真相を求め、波留彦の妻・出口沙都子とともに遠鹿島へ向かう青吾。

多実の人生のかけらを拾い集める旅は、青吾自身の過去をも照らし出し、ふたりを思いも寄らぬ場所へ導いていく。

「喪失」と「不在」を描いた大人の恋愛小説であり、知らないままでも人生は続くが、それでも真実を知りたいと思う気持ちが丁寧に描かれていた。

突然失踪した同居女性と、夫を探す二人の男女。

互いに秘密を抱えながら暮らしてきた関係に、ある日突然訪れる不在。

なぜ多実は、妻のいる男性と遠鹿島へ行かなければならなかったのか。

その逆もまた、なぜ波留彦は多実とともにいたのか。

青吾は多実と長く暮らしてきたにもかかわらず、彼女の過去をほとんど知らなかった。

物語が進むにつれ、多実の歩んできた道と、青吾自身の母親を含む複雑な背景が少しずつ浮かび上がってくる。

散りばめられた疑問は、読み進めるほどに静かに輪郭を帯び、やがてひとつの真実へと収束していく。

読み終えたとき、切なさの余韻が長く残るなか、残された人たちがこれからも幸せでいられるようにと、強く願わずにはいられなかった。

 

著者紹介

一穂ミチさん

大阪府生まれ。2007年『雪よ林檎の香のごとく』でデビュー。

2022年『スモールワールズ』で吉川英治文学新人賞、2024年『光のとこにいてね』で島清恋愛文学賞、『ツミデミック』で直木賞を受賞。

繊細な心理描写と静かな余韻を残す作風に定評がある。