闇バイトの構造と実態を詳細に追った一冊で、これまで断片的だった知識を整理するのに役立った。
「短時間で高収入!?」といった甘い誘いにどう向き合うべきかについても考えさせられる。
特に印象に残ったのは、危険な募集に遭遇した際、自分一人で判断しないことの重要性だ。家族や知人と冷静に相談できる環境があるだけで、被害を防ぐ可能性は確実に高まると感じた。
■202ページより
短時間で高収入をうたう広告を見たときは、「今の日本にそんな都合のよいバイトは存在しない」と疑うところから始めたい。
(トクリュウ=匿名・流動型犯罪グループ)によるテレグラムへの誘導があれば、それは明らかに闇バイトであり、無報酬で働かされるケースも多いと考えるべきだ。
こうした意識を持つだけでも、闇バイトの被害は大幅に減らせるはずだ。結果として国内外のトクリュウ勢力も弱体化するだろう。
国民の防犯意識が高まれば、犯罪も被害も減り、税負担の軽減や民主主義の維持にもつながる。そう考えると、まずは「疑う」姿勢を持つことは決して損ではない。
■13ページより
本書は犯罪行為を美化するものではなく、犯罪防止・被害防止のために記された記録である。
取材を通じて、近代日本の犯罪社会を改めて調べ直すことになり、テクノロジーの進歩が文明の発展だけでなく、トクリュウや闇バイトといった新たな犯罪形態を生み出してしまった現実を痛感した。
トクリュウという新興犯罪者たちの源流をたどり、彼らがなぜ犯罪に手を染め、何を求めているのかを知ることは、急速な文明発展の「光と影」を見つめ直す機会にもなると感じた。
■目次
はじめに 犯罪構造の転換期
第一章 前史 ― “トクリュウ”の源流(1989–2008)
第二章 様々な詐欺システムの盛衰(2008–2013)
第三章 トクリュウ誕生 ― “呼び名なきトクリュウ”からの進化(2013〜)
第四章 闇バイトのリクルーティング(2022〜)
第五章 トクリュウへの対峙(2023〜)
おわりに
1990年代以降の特殊詐欺/匿名流動型犯罪関連略年表
著者紹介
藤原 良さん
週刊誌・月刊誌・各種Webでアウトロー分野の記事を多数執筆。マンガ原作も手がける。万物斉同の精神で取材・執筆にあたる。
