単独世代が増えるにつれ、死後の手続きを家族だけで担うことが難しくなってきました。結果として、葬送を社会全体で支える「公助」への移行が避けられない状況になりつつあることを、本書を通して改めて感じました。
49ページ 急増する独りで逝く人 から
国勢調査によれば、1980年から2020年の40年間で、夫婦と子、三世代同居といった複数世帯は半減し、逆に単独世帯は倍増して全体の約4割に達しています。家族構成の急激な変化により、弔いも「家」から「個」へと移行し、血縁者だけで弔いを継承する仕組みは限界を迎えています。
葬送に詳しいシニア生活文化研究所代表理事・小谷みどりさんは「死の社会化」の必要性を指摘し、家族が担ってきた死後の手続きに福祉の視点を取り入れ、育児や介護と同じように社会全体で分担する仕組みが求められると述べています。
人生の最初と最後――乳幼児期と終末期、そして死後の弔いは、どうしても他者の支えが必要です。「社会で子育てし、社会でおくる」制度的な保証は壮大なテーマですが、血縁主義からの解放、公と私の役割分担にも深く関わる問題だと感じました。
生と死は表裏一体。故人の足跡に思いを馳せ、崇敬の念を抱きながら、自分自身の最期についても考えていく姿勢を大切にしたいと思います。
205ページ から
「どのような死を望み、どのように弔われたいか」。その意思を生前に家族へ伝え、エンディングノートなどに言語化しておくことは、自分にとっても家族にとっても大切だと語られています。
弔いは死者のためであると同時に、残された者が歩みを続けるために不可欠な行為。多死社会の中でも、私たちが故人を思い、先人の足跡に敬意を払い続ける限り、弔いの灯が消えることはない――その言葉が胸に残りました。
特に共感したのは、「弔いは残された者が納得できるかどうか」という視点です。
204ページ から
大久保さんの言葉を借りれば、
「豪華さや儀式の形式が弔いの優劣を決めるのではない。残された者が納得できるかどうか。故人との絆を心に刻み、次世代に受け継げるかどうか」。
たとえ直葬であっても、無宗教であっても、それがすべてだと私も思います。
目次
はじめに
第1章 弔いの値段 現代の葬式事情(利用者の本音 親が死ぬと、いくらかかるのか?寺の実情 弔いの対価)
第2章 墓の値段(利用者の本音 墓は一代限りでいい―令和の墓問題、寺の実情 令和の墓問題―多様化する墓)
第3章 宗教の値段(利用者の本音 弔いに救いを求める日本人、寺の実情 日本人は宗教に何を求めているのか)
第4章 鵜飼秀徳×大久保潤 対談「弔いの値段」(死に直面して知る「弔いの値段」、「お気持ちです」の罠;何にいくら払っているのか?;「離檀料」というお布施はない ほか)
おわりに
著者紹介
鵜飼秀徳さん
浄土宗僧侶、ジャーナリスト。1974年、京都・嵯峨の正覚寺に生まれる。成城大学文芸学部卒業後、報知新聞記者、日経ビジネス記者等を経て独立。2021年に正覚寺住職に就任。主に「宗教と社会」をテーマに執筆、取材を続ける。大正大学招聘教授、東京農業大学、佛教大学非常勤講師。公益財団法人全日本仏教会時局問題検討委員会委員(学識経験者)
大久保潤さん
1963(昭和38)年生まれ。国際基督教大学教養学部卒。日本経済新聞社入社後、社会部、証券部、法務報道部、那覇支局長、新潟支局長を経て、現在は東京本社くらし経済グループ・シニアライター
【No1958】弔いの値段 葬式、墓、法事……いくら払うのが正解か? 鵜飼秀徳 大久保潤KODANSHA(2025/10)
