人生の後半戦。老年期をどのように過ごしていけばよいのかが課題だ。
独りではなく老いてもなおなにかしらの共同体に属すことができれば楽しく生きていけるという。
霊長類学者がゴリラなどの研究を通して気づいたことです。
127P 共同体があれば生きていける
人間の社会の基本構造を知ると、家族が失われても共同体があれば人は生きていけることがお分かりいただけると思います。
総じて女性は、男性よりもさまざまなコミュニティへの接続が上手いから、美しく老いている方多いですよね。自分をしっかり持っていて社会性を失わない。
男性は、目的なく人と付き合うことが結構苦手です。会社を離れるとどこにも属するコミュニティがなくて孤独になってしまいがち。
共同体は、必ずしも現在住んでいる場所に限らなくてもいいんです。今は人々が複数の地域を渡り歩いて暮らすことも容易な時代になったのだから、土地のしがらみに縛られて生きる必要はない。
複数のコミュニティで、自由に動いて自分の力を発揮しやすい場を見つけるのもよいでしょう。ちょっと目先を変えるだけで、自分にとって溶け込みやすい環境がきっとあるはずです。
ご婦人方には寛容な精神で共感力の発揮をお願い申し上げるとともに、男性の皆さんにおかれましては、例え妻が離れていったとしても、コミュニティに根差してさえいれば楽しく生きていけることをお伝えしたいと思います。家族と共同体、両方とも失っちゃダメですよ。
<目次>
はじめに
第1章 老いの力(人はなぜ“人生後半戦”が長いのか?ゴリラは老いるほど美しくなる ほか)
第2章 老いとライフスタイル(動き回りなさい―多拠点居住のすすめ、学びの場を関係人口の起点にする ほか)
第3章 忘れがたきもの(老年のタイタスとの再会、“ワガママ”に生きた今西錦司さんの精神 ほか)
第4章 老いの気構え(良い老い方の三つの条件、数をわきまえる ほか)
あとがき
山極寿一さん
1952年東京生まれ。霊長類学者、人類学者。総合地球環境学研究所所長。日本モンキーセンターリサーチフェロー、京都大学霊長類研究所助手、京都大学大学院理学研究科教授などを経て、2020年9月まで京都大学総長を務める。国際霊長類学会会長、日本学術会議会長などを歴任し、2021年4月より現職
