大局観もって考えていく。
3P
専門家というのは、「研究主題を一点に絞ってその一点だけを徹底的に考究・分析し、学問を究めんとする人たち」のことですが、この手法は「枝葉末節に囚われて大局が見えなくなる」という欠点があります。
彼ら専門家とは違って、筆者は「世界史」という学問を広範に学んで、そこから歴史的法則性を導き出していきます。
雫の一撥ねを以て大河の流れを諭す。
いわば、大河の流れを予測するのに専門家らは「目の前で撥ねた一滴の雫を徹底的に調べ上げ」ますが、筆者は「丘の上から広く大河を見渡してその流れを考察し」ます。
大河の流れ(未来予測)を知るのにどちらが相応しいかは言を俟ちません。
出自、出生、両親まで調べないといけない。相手を本質的に理解するためには。
16P 国を知るために歴史を学ぶ
たとえば、ある人のひととなりを知りたいと思ったとき、その人の現在の地位・肩書や友人関係・評判などについて素行調査しようとも、その人物の本質に迫ることはできません。
その人の人格形成に重要な役割を果たした家庭環境・親兄弟まで含めて、出生から現在までの過去の情報を知る必要があります。
同じように、合衆国の本質を見極めたいと思ったとき、現在の合衆国の政治・経済・社会・外交などをどれだけ調べ上げたところで、その品質を理解することはできません。
合衆国の出自(国民の種姓)・出生(建国背景)から親(イギリス本国)まで遡って、その歴史を学ばなければなりません。
その国の本質を知りたければ、その国の成り立ち、民族の出自、歴史背景、そこから成り立つ民族性を理解することが最初の一歩となる。
歴史は暗記するのではなく、そこから生きる知恵を学び取るのだ。
219P
何も考えずのほほんと生きていても、周りの人に支えられて何となく生きていけるのは「泰平の世」だからです。
ひとたび「乱世」となれば、すべての人が自分の身を守るので精一杯となり、弱者から順番に死んでいくことになります。
自分の身を自分で守る力を付けるためにはどうすればよいか。
それはつねに世界の動向に注意を払い、そこから共通点と相違点を抽出して「法則性」を見つけ出し、その先の展開を推理して事が起こる前に対策を立てなければなりません。
そのために重要な学問こそが「歴史学」です。
歴史の本を読んでそこに書かれた“知識を暗記”することには何の意味もありません。
歴史から生きる知恵を学び取ることに意味があります。
<目次>
まえがき
第1章 二大政党制の成立―「連邦派」と「反連邦派」を経て「共和党」と「民主党」へ
第2章 覇権国家への野望―中立主義から帝国主義となり第一次世界大戦で飛躍
第3章 覇権国家への道―イギリスを追い落としつつ合衆国に都合のいいルールを作成
第4章 狂騒の20年代―「日本潰し」を徹底しつつ世界大恐慌から第二次世界大戦へ
第5章 冷戦時代―時勢による一定の法則性を持つようになった大統領選挙
第6章 ポスト冷戦―短い「一強時代」を終え、ついに覇権国家の座を降りる
第7章 そして現代―「死に至る病」に取りつかれた合衆国の暗い未来
あとがき
神野正史さん
元河合塾世界史講師。YouTube神野ちゃんねる「神野塾」主宰。学びエイド鉄人講師。ネットゼミ世界史編集顧問。ブロードバンド予備校世界史講師。1965年名古屋生まれ。立命館大学文学部西洋史学科卒。自身が運営するYouTube神野ちゃんねる「神野塾」は絶大な支持を誇る人気講座。また「歴史エヴァンジェリスト」としての顔も持ち、TV出演、講演、雑誌取材、ゲーム監修なども多彩にこなす
