男女16人のさまざまな証言をもとに、オンライン・サロンの主宰の中井ルミン氏の正体に迫りくる物語。
人間は多面的なものだ。
対面した人によっては、その人の見え方や印象が違うことはよくある。
しかしこの女性はそんな簡単ではない。印象が良い人たちのほかこのように良くない感想や意見を持つ人たちがいるのだった。
息をするように嘘をつく人間、人の心を操る達人、わたしがどれだけ苦しむか結果をわかってやっていた、ああいう人には深く関わらないほうがいい、サイコパス類であり常識では理解できない異常者、とっても危険な人物、彼女を悪魔って呼ぶ人がいる、今すぐ死んでほしいものすごく苦しんで悶えて死んでほしい、能のお面みたいに表情や感情がない、……。
172P 自分が偉くて重要人物だと思っている、自分が途方もない業績、影響力、権力、知能、美貌、完璧な恋愛を手に入れられるという幻想を持っている、自分が特別な存在であり最も優れた人々とのみ付き合うべきだと信じている、いつも他人の称賛を必要としている、すべてが自分の功績だと思っている、人間関係の中で他者の利用することしか考えない、他人に共感することができない、他人に嫉妬することが多い、また他人が自分に嫉妬していると思い込んでいる、傲慢、横柄である。
これは自己愛性パーソナリティ障害だとあった。
演技的で感情的が特徴な精神障害のひとつだ。
彼女はメタ視点で自分や周囲を観察することができなかった。
そして、ある人が体験した具体的な例が挙げられていた。
173P 人を無視する、不機嫌になって周囲の人に機嫌を取らせる、他人が主役になるとへそを曲げる、特別扱いや感謝を要求する、謝らない、非を指摘されるとあなたは誤解しているだけと相手の非にする、自分の非を他人に投影し批判する、自分への批判や反論は即攻撃とみなして臨戦態勢になる、勝つまで戦う、自分の思い通りにならない相手を責め罪悪感を植え付ける、異常に頑固。
小説のなかだけではなく、世の中にいるかもしれない。周りが不幸になる。こういう感じの人がいたならば、対応策として、逃げる、関わらないことが一番。
179P
気づいたらのなら、逃げましょう。もう一度、言います、逃げましょう。一刻も早く。
1964年大阪府生まれ、群馬県育ち。2008年、第3回『幽』怪談文学賞短篇部門大賞を受賞、翌年、受賞作を表題とした短篇集『枯骨の恋』でデビュー。他の著書に「残花繚乱」「新宿遊女奇譚」など。