「地域包括ケア」の落とし穴 介護の大転換が自治体を破綻に追い込む 濱田孝一 花伝社 共栄書房 | 朝活読書愛好家 シモマッキ―の読書感想文的なブログ~Dialogue~

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「介護の地方分権」

よりきめ細かい対応と住み慣れた地域で暮らせる「地域包括ケアシステム」が、来年の2025年から進められることは知りませんでした。

この地域包括ケアシステムは、団塊世代が75歳の後期高齢者になる2025年を目途として構築を図るとして2005年の介護保険法改正時から説明があったそうです。こんな重要な事項はもっと世の中に広報し説明すべきだし国民が積極的に知るべきだと思います。

 

全国民が同程度の費用で同程度の高齢者サービスを受けられるこれまでの全国共通ケアシステムではなく、地域の基礎自治体である市町村(とその住民)がその責務を負うというものになる。

また、住んでいる市町村によって地方税や医療介護の保険料の差は広がり、要介護高齢者になった時に受けられる介護サービスの内容や質も大きく変わる。

さらに、「社会保障費、特に高齢者の医療介護費の削減は不可避」となり、「介護サービスを抑制すると介護離職が激増、社会システムが破綻」する恐れがあるという。

33P

現行の医療介護制度ままだと仮定すると、2040年には、消費税は20%に、住民税や固定資産税は2から3倍に、介護保険料・健康保険料も高齢者は今の1.5倍から2倍に、現役世代は2倍以上になるということです。

これらに伴って行われるであろう各自治体の諸改革は、これまでの痛みを伴う改革や身を切る改革といった軽いものではないものだと予想されていました。

 

この地域包括システムについてです。

総合相談窓口である地域包括支援センターは、中学校区域に一ケ所を目安に設置される。

7P「重度な要介護状態になっても、住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けることができるよう、住まい・医療・介護・予防・生活支援が一体的に提供される地域包括システムの構築を推進する」

「地域包括ケアシステムは、概ね30分以内に必要なサービスが提供される日常生活圏域(具体的には中学校区)を単位として想定」

「高齢化の進展には、大きな地域差が生じているため、地域包括システムは保険者である市町村や都道府県が、地域の自主性や主体性に基づき、地域の特性に応じて作り上げていくことが必要」

 

マイナンバーの目的です。

84P マイナンバー制度の目的は社会保障制度の抜本的改革

1 高齢者の診療や薬剤の重複を防ぐ、オーバードーズ、医療重複の防止

2 医療保険証と介護保険証との紐づけによる自己負担の見直し(高額介護サービス費、高額療養費、高額介護合算療養費など)※前年度収入や金融資産に応じて負担になるかもしれない。

3 健康保険、介護保険、年金番号、雇用保険番号、生活保護受給番号など、社会保障制度の一元的管理・抜本的な改革

 

 <目次>

序章 誰にも説明できない地域包括ケアシステム(全く進んでいないように見える「地域包括ケアシステム」、地域包括ケアシステム、二つのポイント、地域包括ケアシステムは、高齢者総合施策の行政機構の変革、なぜ国は高齢者総合施策の地方分権を推し進めるのか)

第1章 未曾有の「後後期高齢社会」がやってくる(2035年、団塊の世代が後後期高齢者になる、激減する勤労世代・絶対的不足に陥る介護人材、激増する後後期高齢者の社会保障費をだれが負担するのか、社会保障費の負担を増やすと経済は疲弊する、介護サービスを抑制すると経済は破綻する)

第2章 地域包括ケアは2040年に向けた自治体破綻の一里塚(介護報酬を上げても介護人材不足は解消されない、中学校区を単位としたコンパクトな介護システムは作れない、地域包括ケアシステムが進まない決定的な理由、地域包括ケアシステムの行く手を阻む法律・制度の歪み、地域包括ケアシステムは“自治体ガチャ”の始まり)

第3章 高齢者の医療介護費用の大幅削減は2025年から始まる(介護保険の被保険者の拡大、制度の統合、介護保険の対象者の限定 ほか)

第4章 地域包括ケアシステムの推進―自治体の存続をかけた戦い(地域包括ケアシステムは自治体の存亡をかけた大事業、域内の包括的事業者間ネットワークの構築、地域包括ケアシステムは、総合力が成否を決める、医療介護のコンパクトシティ構想を、最も変わらなければならないのは市民の意識)

おわりに

 

1967年生まれ。経営コンサルタント。1990年立命館大学経済学部卒業。旧第一勧業銀行入行。その後、介護職員、社会福祉法人マネジャーを経て、2002年にコンサルティング会社を設立。現在は「高住経ネット」の主幹として、高齢者住宅、介護ビジネス、介護人材育成などのコンサルティング・講演・執筆を行っている。社会福祉士、介護支援専門員、宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナー

 

【No1572】「地域包括ケア」の落とし穴 介護の大転換が自治体を破綻に追い込む 濱田孝一 花伝社 共栄書房(2023/12)