まずは、日本の海上の安全と治安の確保などで最前線で業務を担っている海上保安庁の皆様方に感謝したいと思います。
「海猿」などの映画、ドラマなどの影響で知名度が上がって知りましたが、正直なところ海上保安庁という組織の実態をあまり知りませんでした。
海上保安庁は、自衛隊のように武力攻撃や治安出動を行う軍隊ではありません。警察のような組織です。海上の安全と治安の確保を図ることを任務とする非軍事の法執行機関であることがわかりました。密輸や密漁などの海上犯罪の取り締まり、領海警備、海難救助、海洋環境の保全、航行管制などの船舶交通の安全確保、海洋調査など幅広い業務を行っています。
次に、海上保安庁法の第25条です。
「この法律のいかなる規定も海上保安庁又はその職員が軍隊として組織され、訓練され、又は軍隊の機能を含むことを認めるものとこれを解釈してはならない」
自衛隊法80条では、他国から武力攻撃を受けるなどの有事の際には、防衛大臣が海上保安庁を統制できるという条文はありますが、自衛隊と同様の防衛任務について武力を行使するのではありません。
非軍事の法執行組織であるために、海上保安庁は「海上における人命の保護等で役割を果たす」のであって、あくまで国防以外の通常で行っているところでの役割分担だということが何度も書かれてありそうだとわかりました。
<目次>
はじめに
第1章 国民みんなに知ってほしい海保の実態(日本のEEZは日本が勝手に主張しているだけ?海上保安庁の予算、定員は十分か? ほか)
第2章 海保を軍事機関にするべきか(法執行機関が領海警備を行うメリット、法執行機関の「緩衝機能」とは? ほか)
第3章 海保と自衛隊の連携・協力(なぜ今まで統制要領はつくられなかったのか?有事の際に海上保安庁は防衛大臣の指揮下で武力を行使する? ほか)
第4章 海上保安分野で世界リードする海保(「自由で開かれたインド太平洋」を具現化してきた海保、国家間の緊張・対立を越えたコーストガードの連携・協力 ほか)
第5章 海保は“絶対”に負けられない(海上保安庁の“敗北”は紛争につながる、ほぼ毎日、接続水域内にいる海警船 ほか)
おわりに
参考文献
第46代海上保安庁長官。海上保安大学校本科第28期卒業。1959年(昭和34年)7月7日生まれ。北海道出身。北海道小樽桜陽高等学校を経て、1982年(昭和57年)に海上保安大学校を卒業する。海上保安官として警備救難、航行安全等の実務に携わり、政務課政策評価広報室海上保安報道官、根室海上保安部長、第三管区海上保安本部交通部長、警備救難部警備課領海警備対策官、警備救難部管理課長、総務部参事官、第八管区海上保安本部長、警備救難部長などを歴任する。2018年(平成30年)7月31日、海上保安監なる。