【No1538】風に立つ 柚月裕子 中央公論新社(2024/01) | 朝活読書愛好家 シモマッキ―の読書感想文的なブログ~Dialogue~

朝活読書愛好家 シモマッキ―の読書感想文的なブログ~Dialogue~

読書とは――著者や主人公、偉人、歴史、そして自分自身との、非日常の中で交わす対話。
出会えた著者を応援し、
本の楽しさ・面白さ・大切さを伝えていきたい。
一冊とのご縁が、人生を照らす光になる。
そんな奇跡を信じて、ページをめくり続けています。

父の小原孝雄は、家裁に送られてきた問題行動のある少年を一定期間預かる補導委託の引受を申し出た。

南部鉄器の職人である孝雄は口数が少ない。

その息子の悟は、親として静かに見つめだけの孝雄を認めずに育ってきた。

孝雄は、しっかり者の妹の由美や孝雄を慕う工房で働く健司ら周りの人に助けられてきた。補導委託でやってきた少年・春斗との生活を通して見えてくる孝雄の想いと過去、それぞれの人が考えている幸せの形には違いがあってどれが正解ということはないのだと。

身近な人だからこそ自分の気持ちを伝えないと伝わらないと気づかされた。家族や大切な人には日頃から感謝や愛情を伝えていきたい。

登場人物が皆とても心温かいのだ。だから、読了後はあたたかい気持ちになれた。

 

ブレない「己を貫き通す」。

昔気質の親方や職人と言われる人はこんな風な人が多いのだろう。

132P

「確固たる自分の意志があるから、頑固とか偏屈とか言われるんです。職人に限らず、なにかを作り出す者はそれがないといけません。刺激や影響を受けつつも、己を貫きとおす芯がないと、中途半端なものしかできない。節子さんも、孝雄さんのそんなところに惹かれたんでしょう」

「母が父を―ですか?」

 

近くにい過ぎて見えない。

221P

「人なんてさ、どんなに話し合ったって、百パーセント分かり合えることなんてないんだよ。もし、そう思っているやつがいたら、あたしからすれば傲慢だよね。なにが善でなにが悪かを決められないような人も、こいつはこんなやつだ、なんて決めつけられない。いろんな価値観、感情、事情で生きてるからね。だから、思ったことはできる限り言葉にしないといけない。気持ちなんて、それでやっと自分が言いたいことの数パーセントが伝わる程度なんだから。しかも、それが近くにいる人だったらなおさら、近すぎて見えないこともあるからさ」

「近くて見えないって、老眼かよ」

健司の茶々に、ママは笑った。

「あんた、うまいこと言うね。たしかに老眼も人間関係も、近ずぎるより、離したほうがよく見えるよね」

「そうそう、離したほうが相手のことがよくわかる」

 

 <目次>

第一章から第八章

 

1968年岩手県出身。2008年『臨床真理』で第7回「このミステリーがすごい!」大賞を受賞しデビュー。13年『検事の本懐』で第15回大藪春彦賞、16年『孤狼の血』で第69回日本推理作家協会賞(長編及び連作短編集部門)を受賞。18年『盤上の向日葵』で「2018年本屋大賞」2位