高松和樹さんの「人間標本」の口絵の美しさの中に不気味さと恐怖感が煽って出てきた。
手記を基にして事件の経緯が明かされていく展開だった。
蝶に対する数々の知識やその色彩の豊かさを知っていればさらにもっと楽しめる行間があった。人間が見えてくる世界と蝶が見えている世界の差異の理解が難しい。
犯人は、彼じゃないのか、いや彼女!?一体だれなの?
犯人像が二転三転していきミスリードに引っ張られてくる。
これぞ!湊かなえのイヤミスだと。
ラストには、その極みによって奈落の底に突き落とされるような気分を味わった。
1973年広島県生まれ。2007年「聖職者」で小説推理新人賞を受賞。翌年、同作を収録した『告白』でデビュー。同書は、2009年本屋大賞を受賞。12年「望郷、海の星」(『望郷』収録)で日本推理作家協会賞短編部門を受賞。16年『ユートピア』で山本周五郎賞を受賞。18年『贖罪』がエドガー賞ベスト・ペーパーバック・オリジナル部門にノミネートされた。