【No1490】家康の誤算 「神君の仕組み」の創造と崩壊 磯田道史 PHP研究所(2023/10 | 朝活読書愛好家 シモマッキ―の読書感想文的なブログ~Dialogue~

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読書とは――著者や主人公、偉人、歴史、そして自分自身との、非日常の中で交わす対話。
出会えた著者を応援し、
本の楽しさ・面白さ・大切さを伝えていきたい。
一冊とのご縁が、人生を照らす光になる。
そんな奇跡を信じて、ページをめくり続けています。

単なる推測ではなく多くの書物や史実を基にして語られる磯田道史さんの持論の展開は、歴史番組で語る姿と同様にとても凛々しいとぼくは感じています。

 

歴史は多くの失敗から成り立っているのです。歴史からどうして失敗したのかその理由を学び研究することは、未来の子孫が同じ過ちをしないよう、その教訓を役に立てることができるので大切なことだと思います。

3P

成功物語よりも失敗事例を見るほうが、ずっと為になります。現代人も「衰え」に備えなくてはなりません。不敗の仕組みが、どうやってダメになっていったのかを歴史の実例で知っておくのです。

歴史書で団体が衰える姿を見ておくと、自分たちの劣化を防ぐ力が養われます。

 

この視点は、面白いポイントでした。

142P 

西郷隆盛や福沢諭吉は、どんな環境に置かれても、「自分の力」で「自分になる」ことができます。その点では福沢の方が、大久保利通よりよほどすごいのです。大久保を三流とまでは言わずとも、二流というのが私の評価です。歴史人物には自分の力で光を放つ太陽の如き人物と、他人の光で浮かぶ月の如き人物の二種類がいます。

人物を見る時には、「環境(出身や家格)の影響でその地位にいるのか。本人の力でその地位にいるのか)を考えるのは、歴史を見る時のポイントの一つです。

 

232P 大事とする自己哲学の軸を持つ

本当に偉い人は、世の人々の幸せに貢献した人です。人からモノや地位をたくさん奪い取った人ではなく、人にモノや満足をたくさん分け与えた人です。

私がこう考えるようになったのは、学生時代にアルベルト・アインシュタインの随筆を読んだせいです。そこに、こう書いてありました。

「人の価値とは、その人が得たものではなく、その人が与えたもので測られる」

 

日本人は、災害時などの食料配布時にも、決して略奪を行うことなく整然と列に並んで順番を待ちます。律義さ、誠実さ、真面目な姿があると思います。たとえお腹が空いていてすぐに食べ物が欲しくても、怪我をしている人や幼い子やお年寄りに先にゆずるような道徳心があります。こんな先人から受け継いだの正の遺産を、これから将来にわたってずっと子孫に受け継がれていけることを願ってやみません。

236P

「正直」や「勤勉」は、徳川家康がつくった徳川時代が高めていった日本人の美徳です。家康が現代日本に遺した最大の遺産は「正直」なのかもしれません。「百術は一誠にしかず」といいます。日本が貧しくなったとか、それを不安がる論調が多いのですが、経済的なものは結果にすぎません。正直さや勤勉さ、礼儀正しさ、好奇心の強さ、学びへの熱意、遊ぶ才能など、江戸人が持っていた美徳を失わないことのほうが、日本の将来にとって大事な気がします。

日本と日本人が、家康がつくった長い平和の良い方の遺産を、未来の人類の幸せに活かしていければよいのではないでしょうか。

 

 <目次>

まえがき 

第一章 家康はなぜ、幕藩体制を創ることができたのか

第二章 江戸時代、誰が「神君の仕組み」を崩したのか

第三章 幕末、「神君の仕組み」はかくして崩壊した

第四章 「神君の仕組み」を破壊した人々が創った近代日本とは

第五章 家康から考える「日本人というもの」

 

岡山県生まれ。慶應義塾大学大学院文学研究科博士課程修了。博士(史学)。国際日本文化研究センター教授。著書に「武士の家計簿」「天災から日本史を読みなおす」「感染症の日本史」など。