カバーの写真は、今も変わらぬ壇ノ浦の美しい夕景だ。
栄枯盛衰。滅びゆく者は美しいのか!?
世界を見ると、あのローマ帝国があった。
夢か幻かのようなこの平家の物語。
安徳天皇母君、建礼門院徳子、平清盛、源義経、後白河法皇などの主な人物が章立てとなっていた。一の谷の合戦、鹿谷の謀議、壇ノ浦の戦い、大原御幸など、どの場面を切り取ってもストーリーとなる名場面が出てきた。自分がまさにそこにいて観ているかのようにそれぞれの情景描写が素晴らしくて緊張感がしっかりとこちらに伝わってきた。
思うとおりに娘たちを天皇の后にする清盛の驕りや二位尼時子の壇ノ浦入水時の覚悟、後白河法皇による木曾義仲、源頼朝と義経らへの両天秤や女性貴族との愛憎劇など、彼らの心情や葛藤、心の闇などを鮮やかにきめ細やかに描き上げた作家の林真理子さん。彼女が書く滅びゆくものみな美しく日本の美が凝縮された大作だった。
<目次>
序 治部卿局
一 入道相国清盛
二 三位中将維盛
三 無官大夫敦盛
四 建礼門院徳子
五 二位尼時子
六 後白河法皇
七 九郎判官義経
結 阿波内侍
注解
人物相関図