交通事故死?展示品の破壊?誘拐?
ぎんなみ商店街で店を構える焼き鳥店「串真佐」の三姉妹、内山佐々美と都久音と桃が繰り広げる、探偵的に活躍して事件を解決に導く物語だ。
内山家三姉妹が謎を解いたあとにその答えを見てみると、ああ何こうだったのかと簡単に思うけれども、それを解くまでの三姉妹の推理と話し合い、そして、ラーメン店やジュエリー店など地元商店街の人々を巻き込んでの行動力は見応えがあった。
真実は一つだが、それを導く道が複数ある。
同じ事件でも立ち位置が違うことで違う景色が見えることで新鮮な体験をするものだ。
ある一つの事件を別な視点で見ていくことができれば更に楽しく読める。
物事は客観的に俯瞰して見ることができるとよいので、別の視点で語られる木暮家四兄弟の「BROTHER編」。
どういう解釈をするのか、どうやって事件を解決に導くのだろうか。
これも併せて読んでいくと面白いものだと思う。
64P
「それにね、これはまあ一般論ってやつだけど、世の中ってのは見かけ以上に複雑でね。表と裏の連中が、お互いに持ちつ持たれつ、薄皮一枚挟んで騙し騙し暮らしてんのさ。そんなごった煮の世の中だから、どこかにきな臭い匂いを感じても、わざわざ匂いの出所を探して嗅ぎ回る必要なんてありゃしない。そんときゃぴしゃりと窓を閉めて、その匂いがこっちに入ってこないようにすりゃあいいのさ」
78P
今回、店主が奥さんに向けた優しさは本物だった。
ただその優しさの歯車の軸がほんの少しだけずれて、質の悪い歯車と嚙み合ってしまった。今回の事件はそんな印象がある。そのことが、都久音には何だかとても怖い気がした。悪いことをする人が悪人とは限らないし、善いことをする人が善人とも限らない。そもそも悪いことと善いことの区別なんて、この世界にはないのかもしれない。
表と裏は薄皮一枚―そんな神山の言葉が、ずしんと心に重石のようにのしかかる。
<目次>
だから都久音は噓をつかない
だから都久音は押し付けな
だから都久音は心配しない
神奈川県出身、東京大学卒業。『恋と禁忌の述語論理(プレディケット)』で第51回メフィスト賞を受賞しデビュー
ほかの著書に「探偵が早すぎる」など。
