歴史や現実から目を開いて学ぶべきことは学ぶべき。
それも取り返しのつかなくなる前に。
いまからでも遅くはないことはいまからすぐすべきだろう。
現在も継続しているウクライナ戦争から、食料の流通が滞ったため小麦などが国内に入ってこない。輸送コスト、食料価格の高騰、物価上昇に繋がっている。
東日本大震災の福島原子力発電所事故から、「安全神話はない」ことを学んだ。
平時での諸外国との貿易は、問題は少ないものと思われる。
しかし、自国民が困窮しているときに、他国民に食料を与えてくれるものだろうか。
またいつまでも平和が続けばよいのだが、近隣諸国で有事のとき、国内に安全に食料が入ってくるのだろうか。
この本によると、食料を国内で自給できる率が、約37%という。
残り63%が海外に依存していることになる。
人は生きるために、必ず食物を食べなくてはいけない。
可能性があるのならば、国内で賄えるようにすべきではないのだろうか。
仮に、食料、肥料、餌などを買うため、お金をどれだけ出しても外国が売ってくれなったらどうする!?もし外国から日本に食料が届かなくなったら!?……。
約6割の日本人が餓死するという想像される悲劇以上に、社会・経済全体に渡って、とても悲惨な事態に陥るものと思われる。
5P
「国際物流停止による世界の餓死者が日本に集中する」
37%という食料自給率に種と肥料の海外依存度を考慮したら日本の自給率は今でも10%に届かないくらいなのである。核被爆でなく、物流停止が日本を直撃し、餓死者が世界の3割にも及ぶという推定は大げさではない。
重要なことは、核戦争を想定しなくても、世界的な不作や国同士の対立による輸出停止・規制が広がれば、日本人が最も飢餓に陥りやすい可能性があるということである。
「お金を出せば輸入できる」ことを前提にした食料安全保障は通用しないことが明白になった今、このまま日本が疲弊していく、本当に食料輸入が途絶したら国民は食べるものがなくなる。不測の事態に国民の命を守ることが「国防」とすれば、国内の食料・農業を守ることこそが防衛の要、それこそが安全保障だ。
79P 食料は武器であり、標的は日本
1973年当時のバッツ農務長官は、
「日本を脅迫するのなら、食料輸出を止めればいい。食料は武器であり、標的は日本だ。直接食べる食料だけでなく、日本の畜産のエサ穀物を、アメリカが全部供給するように仕向ければ、アメリカは日本を完全にコントロールできる。これがうまくいけば、同じことを世界中に広げるのがアメリカの食料戦略となる。みなさんそのために頑張ってほしい」
<目次>
はじめに
序章 「クワトロ・ショック」が日本を襲う
第1章 世界を襲う「食の一〇大リスク」
第2章 最初に飢えるのは日本
第3章 日本人が知らない「危険な輸入食品」
第4章 食料危機は「人災」で起こる
第5章 農業再興戦略
あとがき
東京大学大学院農学生命科学研究科教授。「食料安全保障推進財団」理事長。1958年生まれ。三重県志摩市出身。東京大学農学部卒。農林水産省に15年ほど勤務した後、学界へ転じる。九州大学農学部助教授、九州大学大学院農学研究院教授などを経て、2006年9月から現職。1998年~2005年夏期はコーネル大学客員助教授、教授
【No1302】世界で最初に飢えるのは日本 食の安全保障をどう守るか 鈴木宣弘 講談社(2022/11)