【No1228】歴史学者という病 本郷和人 講談社(2022/08) | 朝活読書愛好家 シモマッキ―の読書感想文的なブログ~Dialogue~

朝活読書愛好家 シモマッキ―の読書感想文的なブログ~Dialogue~

読書とは――著者や主人公、偉人、歴史、そして自分自身との、非日常の中で交わす対話。
出会えた著者を応援し、
本の楽しさ・面白さ・大切さを伝えていきたい。
一冊とのご縁が、人生を照らす光になる。
そんな奇跡を信じて、ページをめくり続けています。

終身現役で一生勉強をモットーに、歴史を学ぶのは楽しい。

歴史は、数字や人物などを丸暗記するだけではなく、その事象がなぜ起きたのか実証するだけでもなく、仮説を含めて後世の人たちが学ぶための良い教材となる。

 

前半は、歴史学者になるまでの下地の部分で幼少期や学生時代などの自叙伝なのですこし冗長すぎてあまり前に進められなかった。

後半は、歴史学者の立場、歴史研究の取り組み方、本郷さんの自己主張の度合いが強い歴史論が絶好調でぐいぐい引き込まれてなかなか面白かった。

 

ここまで心の中を赤裸々に吐露した歴史学者は未だ見たことも聞いたこともない。

当たり前な話を当たり障りのなく言うのは聴いていてもなんとも面白くない。まったくつまらない。そんな人は興味がないし要らない。

批判は結構だと堂々と言えるような学者の話を聞いていたらほんとスカッとして気持ちがよい。

日々極めている歴史学の世界のなか、異端とも言える意見を堂々と言えるところが凄いと思う。

批判されても大丈夫だという本郷さんの堂々とした大人の気概に敬意を表したい。

これから気にかけて彼を応援していきたい。

 

9P

学生時代の私は、史料をひたすら読み込む「実証」という帰納的な歴史に魅了された。その一方で、いくつかの史実をつなげて仮説を組み立てようとする演繹的な歴史のもつ面白さにハマった時期もあった。だが、実証を好む人々からは「仮説」というものは徹底して異端視され、しばしば私も批判されることになった。

さらに学びを深めるうちに、歴史学、歴史というものは決して悠久でも万古不易でもなく、それどころか、むしろ時代の持つ雰囲気や世論、世界の流れなどによって、簡単に姿をかえてしまう、ある意味恐ろしいものなのだという現実も知った。

また、受験科目としての安直きわまりない「歴史」が、数多くの歴史嫌いを大量生産し、結果的に歴史学という学問の著しい衰退を招いてしまっている事実にも言及したい。

こうした学問の機微にふれる話は歴史の授業や歴史学の講義でもなかなか話題にならない。

要するに歴史学というものは、しっかりした実体がありそうで、実はかなり相対的でふり幅が大きい、不安定な学問なのだ。

 

◎67P 歴史とは誰のものか

何よりも従来の「物語の面白さを一方的に味わう」歴史ではなく、歴史的な一つひとつの事実をもとに「誰のための」「どの視点に立った」歴史であるのかを深堀りして考える、ほんとうの歴史の面白さ、奥深さに出合ったような気がした。「考える」というのはとても面白いことなのだ。

 

◎198P 「ホラを吹け」の真意

「古代史への疑念」と同様に「史料への疑念」という視点を持たなければならない。史料に書いてあるから正しい、と断ずるのはおかしいと私は思う。

「史料を鵜呑みにしてはいけない」

 

◎201P 分析こそが新しい物語をつくる

本当の歴史学というのは、史料に書いてある内容をそのまま信じることではない、分析してバラバラにして解析していくものである。ただし、すべてを壊すわけではなく、むしろ、豊かな世界や物語を構築する方策なのだ。

 

 <目次>

はじめに 国家的大事業の『大日本史料』編纂 歴史学は不可解なり

第1章 「無用者」にあこがれて―立身出世は早々にあきらめ、好きなことをして生きようと思った 幼少~中高時代(「死」が怖かった、野口英世のような医者になろう ほか)

第2章 「大好きな歴史」との訣別―歴史学は物語ではなく科学‐だから一度すべてを捨てる必要があった 大学時代(入学直後にひきこもり、「こんなのオレが好きな歴史じゃない!」 ほか)

第3章 ホラ吹きと実証主義―徹底的に実証主義的な歴史学を学んだ、そしてホラの吹き方も― 大学院時代・そして史料編纂所へ(大学院の学費、未来の妻に説教される ほか)

第4章 歴史学者になるということ―歴史学には課題が多い。だからこそ大きな可能性があるのだ― 史料編纂所時代・そして新たな道へ(結婚という名の…、私は認められたかった ほか)

おわりに ヒストリカル・コミュニケーターに、オレはなる!(「日本史のIT化」は学問か、若い教員の憤り ほか)

 

1960年、東京都生まれ。東京大学史料編纂所教授。東京大学・同大学院で石井進氏・五味文彦氏に師事。専攻は日本中世政治史、古文書学。同史料編纂所で『大日本史料』第五編の編纂を担当するほか、『吾妻鏡』の現代語訳(共訳)にも取り組んでいる

著書に「中世朝廷訴訟の研究」「上皇の日本史」等。