文豪谷崎潤一郎になって考えてみたい。
「現代は、街にも家にも人の周りには、光が多すぎ眩しすぎ明るすぎる。
芸能人向けゴシップを象徴するかのようにあけっぴろげすぎ。
こころがまったく落ち着かない。
わびさびやもののあはれがあまり感じられない。
蛍光灯やLEDではなく、ロウソクのほのかな灯がいい。
大和撫子のような佇まいで奥ゆかしく静かに落ちつきたい。」
「陰翳」の極みによって、自分のDNAに組み込まれている古来の日本人の美意識が覚醒させられた。
神経質的に病的なほどに、谷崎氏は、陰影の観察眼が鋭い方だと感じる。
古きよき日本家屋の魅力は、陰影に見たり。光と陰の対比にあった。
座敷、床の間、和紙、漆器、羊羹からも。
「秘すれば花」風姿花伝の観阿弥世阿弥が頭に浮んできた。
漆黒の闇の広間。
そこにあった金屏風に当たり反射された懐中電灯の光。
そこはかとなくほの暗い美と趣を感じた。
ぼくには、煌々と照らされる月より、流れる雲の間からほのかに光るものの美しさ、妖しさが勝るなり。
<目次>
陰翳礼讃
懶惰の説
恋愛及び色情
客ぎらい
旅のいろいろ
厠のいろいろ
解説 吉行淳之介
1886年東京都日本橋人形町生まれ。1965年神奈川県湯河原にて79歳で没。東京帝国大学国文科中退。小説家、劇作家、随筆家。明治末期から戦後の昭和中期まで、戦時中の一時期を除き、文壇の第一線で活躍。近代日本文学を代美する作家として、内外で非常に高い評価を受けている。豊富な語彙を駆使する端麗な文章と巧みな語り口、作品ごとに変化する題材や文体など、嘆美派、悪魔主義、古典回帰などと評されながら、「文豪」「大谷崎」と称されるにふさわしい業績を残した。1949年に文化勲章受章
