谷川十七世名人によると、将棋棋士とはこういう方だそうです。
将棋棋士は、直感と読みと大局観を持てる人。
「棋士は局面と局面をつなぐ対局の流れ、対局者の構想を読みながら指し手を進めていく。一つの局面をそれまでの展開と、今後分岐していく展開の流れの中に捉え、その膨大な選択肢の中から最善と思われる指し手を直感と読みと大局観によって選ぶ」
藤井聡太さんは、まだ十代。
189P 棋士の全盛期とは、「25歳から30歳、それ以降はその人次第」と答えている。
これからも彼の活躍は、当分の間継続していきます。
彼によっていまの将棋界は一層の隆盛を誇って、世間から彼の一挙手一投足に注目を浴びていくはずです。
藤井さんの凄さや凄みが、谷川さんの冷静沈着な客観的な目から強く良く伝わってきます。
172P
藤井さんの強さは、最善手を求める探究心と集中力、詰将棋で培った終盤力と閃き、局面の急所を捉える力、何事にも動じない平常心と勝負術など、極めてアナログ的なものだ。
将棋に華があります。びっくりするような捨て駒ですとか、才能を感じさせる一手が出てきます。もちろんそういう作りの将棋を指しているということはあるんでしょうが、魅せる将棋を指すということは素晴らしいと思います。
29P 局面の急所を捉える力
直感の精度が高い。
理詰めで駒を動かした結果ではなく、ある種の第六感、勘のようなものによって最大の勝負どころや盤面におけるポイントをつかむ。とくに初見の局面で急所や本質を見抜く能力に秀で、閃きの豊富さにもつながる。大局観に通じる、棋士ならだれもがうらやむ才能である。
中原誠十六世名人の言葉からは、
「まず将棋が面白い。全体的に新鮮味がある、という印象です。谷川さんや羽生さんが出てきたときも同じでしたが、プロが観ても将棋が面白いんです」
プロから見ても面白いと言わせる棋士はなかなかいないのではないかと。
事前準備の大切さや毎日の鍛錬の積み重ねの必要を知る。
とくに才能とは毎日積み重ねる力だという。
これらは、凡人ができる範囲内でなんとか真似をしていけそうなことがらです。
80P 精神的な強さにも裏付けがいる
事前に研究したことがたとえ役に立たなくても、「自分は対局前にできる限りの準備をした」という事実が、前向きな気持ちで対局に臨む姿勢につながる。事前研究は実際の技術的なこととともに、精神的な安定剤の役割を果たすのである。
結局、毎日の積み重ねこそが勝負どころで帰趨を左右する。積み重ねていけば、意識しなくても、ある程度の自信を持って対局に臨めるようになるのだ。これについて特別な修行はない。精神力は経験値でもあり、対局を重ねることで自然に養われるものだと思う。
才能に関しても同様のことが言える。才能とは一瞬の閃きのようなものではない。努力の末のギリギリ紙一重のところで出てくるものだ。
あえて言うのなら、才能とは毎日毎日の積み重ねをそれほど苦にせず、自然に長時間続けることのできる力のことを指す。
<目次>
はじめに
第1章 進化する藤井将棋
第2章 最強棋士の風景
第3章 不動のメンタル
第4章 「将棋の神様」の加護
第5章 「面白い将棋」の秘密
第6章 AI革命を生きる棋士
第7章 混沌の令和将棋
おわりに
1962年生まれ、神戸市出身。5歳で将棋を覚える。’73年4月、5級で若松政和八段に入門。’76年12月、四段。’82年、八段。’83年6月、加藤一二三名人を4勝2敗で破り、史上最年少の21歳2ヵ月で名人位を獲得。’84年、九段。’97年、羽生善治名人を4勝2敗で破り、二度目の復位、通算5期で十七世名人の資格を得る。2002年7月、公式戦通算1000勝。’18年10月、公式戦通算1300勝を達成。竜王4、名人5など、タイトル獲得数は計27。棋戦優勝は22。’12年12月より’17年1月まで、日本将棋連盟会長。’14年、紫綬褒章受章。
