【No.909】アンソーシャルディスタンス 金原ひとみ 新潮社(2021/05) | 朝活読書愛好家 シモマッキ―の読書感想文的なブログ~Dialogue~

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読書とは――著者や主人公、偉人、歴史、そして自分自身との、非日常の中で交わす対話。
出会えた著者を応援し、
本の楽しさ・面白さ・大切さを伝えていきたい。
一冊とのご縁が、人生を照らす光になる。
そんな奇跡を信じて、ページをめくり続けています。

コロナ禍で世界が変わった。

人との付き合い方も変わった。

そういったところでの苦悩には共感できるところがある。

 

全体的に退廃的であり破滅的な感じがする。

それぞれに表現力があり説明する箇所は芳醇だ。

じっとその場の空気を見ながら考え抜いて書かれてあると思う。

反映されている箇所の筆力が強いので、その老いに怯える気持ちがよく伝わってくるのだ。

103P

「ずっと、森川さんと付き合いながら、どこかで森川さんは別のところを見てて、僕のことを真っ直ぐ見てくれてないような気がしてました」

「私も大山くんと付き合いながら、大山くんと同じ世界にいるって一度も思えなかった」

私は大山くんと付き合っていたのではなく、老いに怯えあらゆる恐怖に耐え戦いながらも彼と一緒にいたいと望む自分と付き合っていたのではないだろうか。そんな突飛な考えが浮かぶ。(中略)

彼と向き合うたび、老いに怯える自分と直面した。彼と向き合うために美容整形に走り、走れば走るほど私は直面し続けた。自信のない自分、恐れをなす自分と、その自分に阻まれて、私は一度も大山くんとまっすぐ見つめ合うことができなかった。

 

カッコつけないで。

自分を素直にさらけ出して。

素直な気持ちで付き合える相手がよいと思う。

疲れないようにして生きていければ。

138P

己のナイーブさに苦しみナイーブさで私を傷つけ、ナイーブさでもって一方的に関係をぶちのめした奏。ディスコミュニケーションでコミュニケーションを図っているかのような夫、その二人の間で透明人間になったような孤立感に、悲しいでも寂しいでもなく自分もまた自分を陽炎のようなものに感じていた私は、龍太にその存在を祝福されることでようやく主体的な存在として振る舞えるようになった気がしていた。龍太の前では、私は自分の望みを全て言葉にできる。言動、セックス、関係、服装に至るまで、私は自分のしたいこと、して欲しいこと、して欲しくないことを全て言語化し、要求することができる。楽で、楽しくて、何も考えずに思ったことを口にできる関係は久しぶりで、その解放感に浸りきっていると自分が馬鹿になった気がして危機感を抱くほどだ。人は自分の内面をさらけ出すほど、その大したものの出て来なさによって、底の浅さを認識する。でも元々大したものでもない自分に何かあると妄想してしまうことの方がよっぽど恐ろしいことであるはずだ。

 

セックスを題材にしてエロいが文学的っていう感じで印象に残った。

240P

「精神力?根性論的な?」

「じゃなくて、自分の気持ちよさに集中しないようにする精神力」

「気持ちよさに集中してないの?」

「なんていうか、気持ち良くなりながらも気持ち良さに身を委ねないように気をつけるんだよ。長い時間をかけてイク方が気持ちいいからね。だから、常に頂点を目指してる感じかな。せっかくだから、限界を目指したいじゃない」

 

 <目次>

ストロングゼロ  

デバッガー   

コンスキエンティア

アンソーシャルディスタンス

テクノブレイク  

 

1983年生れ。2003年、『蛇にピアス』で第27回すばる文学賞を受賞。2004年、同作で第130回芥川龍之介賞を受賞。2010年、『トリップ・トラップ』で第27回織田作之助賞を受賞。2012年、『マザーズ』で第22回Bunkamuraドゥマゴ文学賞を受賞。2020年、『アタラクシア』で第5回渡辺淳一文学賞を受賞