法医学は、普段はなかなか関わらないし聞こえてこない目にしない。
不審死された人の原因を究明する犯罪や事故の撲滅にとって重要な仕事です。
死者の声なき声を訊くために。
死者は、もう口で語ってくれないけれども、解剖してみると体が真実を語ってくれます。
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遺族の声よりも先に、ワタシたちは死者の声に耳を傾けるべきなのです。生きている人間は放っておいても向こうから喋ります。でも死者はワタシたちが耳を澄ませないと、ひと言も語ってくれなのですよ。
浦和医大法医学教室の光崎藤次郎教授。
彼の姿勢はこのような風です。
日頃からもどんな感じなのかよくわかります。
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聖域に足を踏み入れた瞬間、光崎は一人の老人から君主へと変貌する。天井天下唯我独尊、光崎の揮うメスと知見に逆らえる者は存在しない。
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小柄だが背丈は関係ない。全身から発散される威圧感が周囲の空気を張り詰めさせ、解剖台に一歩近づくと度に真琴を緊張させる。
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死体を解剖室に運び入れキャシーとともに準備を終えると、タイミングを見計らったように光崎が降臨する。
途端に解剖室の空気がぴんと張り詰める。歩みの遅い小柄な老人なのに、全身から放たれる威圧感は巨漢のレスラー並みだ。
解剖着に着替えた光崎は実年齢よりも十は若く見える。テレビの画面に映る顰め面の光崎も味があるが、やはり解剖着の光崎に勝るものはない。
名言だな。
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後になってあれはやっぱり殺人だったと分かった時、きっと取返しがつかなくなっている。それくらいだったら、たとえ多少の無茶をしても今できる全てをしておいた方がいい。せずに後悔するより、してから反省する。
「これから一人だけ誰かを殺す。自然死にしか見えないかたちで。
日本の司法解剖の問題点を厳しく指摘した浦和医大の光崎教授に犯行予告が届いた」
最後まで読まないとわからない。
全編を通して繋がっていた犯人は、今回も意外な人物です。
<目次>
一 老人の声
二 異邦人の声
三 息子の声
四 妊婦の声
五 子供の声
1961年岐阜県生まれ。2009年「さよならドビュッシー」で「このミステリーがすごい!」大賞を受賞しデビュー。他の著書に「作家刑事毒島」「護られなかった者たちへ」など。
