城郭考古学者の千田嘉博さんをテレビで見ている限り、彼は口角を上げて笑顔が絶えません。また、人との対応や口調、仕草などを見ていると謙虚な方ではないかなと思います。
彼はとても幸せな人だと思います。
自分が好きなこと、興味があること、面白いと思うことを仕事にしているからです。
中学生のときの姫路駅から見た姫路城の美しさと強さに彼は魅了されたのでした。
旅行から帰って来てすぐに図書館に行き姫路城を調べはじめました。それ以来ずっと城の虜となりました。そのまま大人となって城の考古学を研究する城郭考古学者となったのです。
ぼくも千田さんも好きな歴史家である磯田道史さんといっしょに、千田さんが比叡山延暦寺の山城散策をしていた番組がありました。それを見たことを思い出します。
「ここに障子堀があった」とか「すごい曲輪だ」、「この石垣は●●積み」、「鉄砲や弓矢で狙い撃たれてここに来るまでに何回も死んでいますよ」などと叫びながら走り回って口から泡を飛ばしながら解説されている姿は、とても楽しそうなのです。こちらも見ていて感化されて同時に楽しくなります。
山地は当然に高低差があるので、本当は歩くのにしんどくて苦しいのにもかかわらず、彼は楽しそうにして歴史のお話をするのです。
そうなると、視聴者の一人としてなおさら興味を抱くようになります。
ぼくは、考古学や歴史地理学、建築史、史跡整備などの文理にまたがる多様な学問分野を、城を中心に総合して学融合分野として研究していく「城郭考古学」という学問分野が、千田さんを存じあげていないときには全く知りませんでした。
城跡から日本のいろいろな歴史を考えていく志向は、多面的に歴史状況を検討できる面白いやり方だと思います。
文章のいたるところからは、千田さんの城への熱い気持ちがひしひしと伝わってきました。
千田さんの冒険はこれからも続きます。
陰ながら、テレビを見ながら応援していきたいと思います。
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歴史を考えるのに、本から学ぶのは大切である。しかし自分自身で城を訪ねて、本物の城から五感で考えるのも、とても大切である。誰もが本物の考古資料である城跡に接し、専門家でなくても実物から直接考えられるというのは、歴史研究では城の分野以外では考えられない。
だから城の冒険は誰にも等しく魅力的で、どこまででも深めていける。そうした城の魅力は世界に広がる。世界の城を知ることは、日本の城をより深く理解することにつながっていく。城郭考古学の冒険はなんと楽しいのだろう。
<目次>
はじめに
第1章 城へのいざない(城の世界へ、城のシンボルは天守か ほか)
第2章 城の探険から歴史を読む(戦いの考古学、城の「鑑賞術」1―櫓や門を読み解く ほか)
第3章 城から考える天下統一の時代(戦国から近世への城郭変化、国際的視点の城郭象徴論へ ほか)
第4章 比較城郭考古学でひもとく日本と世界の城(日本の城と西洋の城、世界のなかの日本の城 ほか)
第5章 考古学の現場から見る城の復元(二一世紀の城人気、平面プランと考古学 ほか)
おわりに
引用・参考文献
初出一覧
1963年、愛知県生まれ。城郭考古学者、大阪大学博士(文学)。名古屋市見晴台考古資料館学芸員、国立歴史民俗博物館考古研究部助教授などを経て現在、奈良大学文学部文化財学科教授。日本と世界の城を城郭考古学の立場から研究。特別史跡熊本城跡の文化財修復委員や特別史跡名古屋城跡石垣部会委員をはじめ、日本各地の城跡の調査と整備・活用の委員を務めている。2015年に第二八回濱田青陵賞を受賞。2016年にはNHK大河ドラマ「真田丸」の真田丸城郭考証を務めた。
