【No.726】眠れる美男 李昂 藤井省三 訳 文藝春秋(2020/12) | 朝活読書愛好家 シモマッキ―の読書感想文的なブログ~Dialogue~

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川端康成の『眠れる美女』は、高齢男性の性を扱ったものだった。

一方この『眠れる美男』は、高齢女性のエロティシズムを扱う作品だった。

共通しているのは、相手の異性が眠っていることか。

元外交官の妻として裕福な生活を送る殷殷夫人は、フィットネスジムの野性的なインストラクター、パンとの恋の罠に陥ちていくのだった。

 

露骨すぎないエロティシズムな言い回しによって、じわっとにじみ出てくるインクのような桃色の気分が、紙面のほうから眼のなかへと静かに拡がっていくのでした。

81-82P

彼は彼女に肉体を見せた。

男性の肉体。

彼の肉体。

あの緩やかなスウェットに遮られた男性の肉体は、実はより多くの想像を掻き立てるのだ。一部露出する腕は、三角筋、上腕二頭筋、上腕三頭筋の境界も明らかで、隆起する筋肉の間は、割れ目も露わだろう、それならば、隠された分厚く迫り出す胸筋、触れば固いシックスパックの腹筋、見事に強大壮健なる筋肉の両足、それらもまたいかに驚くべき姿であろうか。

彼への愛に気付いた後、彼女は彼の肉体を渇望するようになっていた。

いや、どうしても入って欲しいというわけでもない。

最初に生じたのは接触だった。

彼による接触は、まずは手によるのみである。

 

 <目次>

自序書前に記す 回春/春回

プロローグ

愛 山と海、永遠の場、夫

別 チャーリー、彼の肉体、五彩の羽衣

離 犬、時差、My Heart is Ghost Town、小鮮肉

苦 あなたは遅れた、補助薬、補助―薬、忘却

エピローグ

後記

訳注

訳者解説

 

李昂[リコウ]

1952年、台湾西海岸中部にある古都・鹿港で生まれた。1970年、台北の文化大学哲学部に入学、75年、アメリカ・オレゴン州立大学演劇コースの大学院に留学、78年に帰国後は旺盛な創作活動のかたわら、コラムニスト、テレビ評論家としても活躍。2004年にフランス政府より芸術文化勲章騎士勲功を授与されたほか、台湾では聯合報中篇小説賞、呉三連文学賞などを受賞。

 

藤井省三

1952年、東京都生まれ。桜美林大学文学部助教授を経て88年東京大学文学部助教授、94年同教授。2018年退官。現在名古屋外国語大学教授。日本学術会議会員(2005~14年)。専攻は現代中国語圏の文学と映画。