「明けぬ里」親に借金のかたとして根津の岡場所に売られた「よう」は悪態をつき続けたが、気に入ってくれるご隠居がいて身請金を出してもらい体を自由にしてくれた。その後長屋住まいの男と所帯を持った。
遊女の時には絶大な人気で誰にでも優しい「明里」姐さんに対して反感を持つ反面、ようは、明里が自身を偽る苦しい内面にも気づいていた。
その二人が偶然、町で出会い互いに妊娠していることを知り励まし合うが、明里が身請主の使用人と心中したことを知らされる。
例えば、こんな風な生きる喜びと哀しみが織りなす連作短編話が入った時代小説だ。
貧しくとも支えあい生きる姿や屈託なく明るい気分にはなれないけどそれぞれが幸せならいいのかと思うような話があり。
人々の心の中を象徴しているような淀んだ心川(うらかわ)沿いに詰め込まれるようにできた集落の心町(うらまち)の長屋の住人たちの物語だった。
長年にわたってたまりにたまった滓のような屈託が、少しずつ吐き出されていきまたさらにそれが生み出されてくるよう。
誰もが何かしら重たいものを抱えてそれをなだめながら日々を暮らしていることがわかる。
そこである日ふと投げ込まれた小石がさざ波を立てるのだ。
理不尽を呑み込み抗いながらもそこで暮らす人々がいるいとおしいすぎるお話だった。
<目次>
心(うら)淋し川
閨仏(ねやぼとけ)
はじめましょ
冬虫夏草
明けぬ里
灰の男
1964年北海道生まれ。2005年『金春屋ゴメス』で第17回日本ファンタジーノべル大賞を受賞し、デビュー。2012年『涅槃の雪』で第18回中山義秀文学賞、2015年『まるまるの毬』で第36回吉川英治文学新人賞を受賞。近著に『亥子ころころ』『せき越えぬ』『わかれ縁』などがある。
