十三年前の夏、小学四年生だった吉井百合は、当時警察官だった男に誘拐された。
地獄のような5年の歳月、その男の自宅に監禁されて弄ばれた。
現在は、歌舞伎町の男装クラブ「クロスの薔薇」で働いている。
あの悪夢がよみがえる。悪意がまた忍び寄る。不幸な者をさらに不幸に追いやるために。
必死に自活する彼女の身辺では、犯人の谷藤の仮釈放と同時期に奇怪な出来事が続いていた。
無言電話や姿なき足音、首を切られたテディベア。
ルームメイトの芦川真優と舘林累の二人が次々と失踪してしまった……。
初期からよく顔を出していて、関係者の近くに当たり前のようにいて主人公と親しくしているような人物がじつは犯人だったのか。
よくあるミステリーだが、気持ちが悪くなるくらいにサイコ的な展開だった。
真犯人が彼だったのは、最後まで読まなければわけがわからなかった。
傷ついた人に対してさらに塩を塗りもみ込み続けるように、痛みがあればさらに拡張させて、人の弱みに付け込んで弄んで快楽を感じるような悪魔のような生き物がいた。
最近起きている犯罪から推測すると、フィクションの世界だけでなく、ノンフィクションの世の中にいてもおかしくないのではないかと感じた。
<目次>
第一章 過去
第二章 仮釈放
第三章 訪問者
第四章 魚眼
第五章 錯誤
第六章 残虐
エピローグ
1951年東京都生まれ。一橋大学法学部卒。東京大学大学院(比較文学比較文化専門課程)修了。現在、法政大学国際文化学部教授。専門は比較文学、アメリカ文学。研究者としての論文・訳書多数。2012年、『クリーピー』で第15回日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞、作家として本格デビュー
