約百年前のスペイン・インフルエンザ(スペイン風邪)のパンデミックから、はしか、天然痘などさまざまな日本での感染症の史実がちりばめられています。
京都に住んでいたスペイン風邪に罹ったとある患者側から見る感染症の惨さも知ることができます。
マクロとミクロの視点から感染症の恐ろしさや有効な予防策とは、免疫の問題などの教訓を我々に教えてくれた歴史から学べる知恵のある賢者の本でした。
磯田さんがまとめてくれた歴史から考えると、新型コロナウイルスの撲滅というよりも、症状が重症化しないようにするために、患者を病院やホテルなどで一旦隔離し治療しながら一般に罹患させないことやワクチンをできるだけ早く安全に開発し人にウイルス抗体をつくれるようにすること。
また、経済を活発化しては制限しては止める、緩める、経済活動の緩和と制限、他国での感染者を減らしている事例の活用、タミフルなどの風邪に効くとされる既存の薬を用いて症状を緩和させ患者の体力を回復させる自己免疫能力向上等々。
既に日本で対応していることも含めて、様々で十全な方策を並行活用しながら、今はウイルスと共存しながら生きていく道が、歴史から見ても現実的でないかと思いました。
<目次>
はじめに
第一章 人類史上最大の脅威
牧畜の開始とコロナウイルス、ペリー艦隊が運んできた感染症、スペイン風邪は波状的に襲ってきた ほか
第二章 日本史のなかの感染症―世界一の「衛生観念」のルーツ
「最初の天皇」と疫病、奈良の大仏は天然痘対策?、疫神を歓待する日本人、江戸の医学者の隔離予防論 ほか
第三章 江戸のパンデミックを読み解く
すでにあった給付金、薬をただで配った大坂の商人たち、上杉鷹山の患者支援策 ほか
第四章 はしかが歴史を動かした
「横綱級」のウイルスに備えるには、都市化とパンデミック、麻疹が海を渡る ほか
第五章 感染の波は何度も襲来する ―スペイン風邪百年目の教訓
高まった致死率、百年前と変わらない自粛文化、「「感染者叩き」は百害あって一利なし ほか
第六章 患者史のすすめ―京都女学生の「感染日記」
日記が伝える「生きた歴史」、ついに学校が休校に ほか
第七章 皇室も宰相も襲われた
原敬、インフルエンザに倒れる、昭和天皇はどこで感染したか?、重篤だった秩父宮 ほか
第八章 文学者たちのスペイン風邪
志賀直哉のインフルエンザ小説、〝宮沢賢治の〝完璧な予防策〟、荷風は二度かかった? ほか
第九章 歴史人口学は「命」の学問 ―わが師・速水融のことども
数字の向こう側に、晩年に取り組んだ感染症研究 ほか
1970年岡山県生まれ。慶應義塾大学大学院文学研究科博士課程修了。博士(史学)。国際日本文化研究センター准教授。著書に「無私の日本人」「天災から日本史を読みなおす」など
