動物は、見ている限り面白いものだ。
例えば、動物園で。
一家団欒の家族連れが多い中、昼食も取らなくても動物園を一周してすべての生き物を独りでじっくり観察することが好き、歩き続けるのも厭わないくらいに楽しい時間だ。
彼らの生態がどうであれ、一体何をしているのか、何もしていないのか。何かを考えているのか、何も考えていないのか。お腹が空いているのか、空いていないのかなど勝手に頭の中をあれこれ巡らせているのが愉しく気持ちがよいのである。
1P 「はじめに」から
「人は見た目が9割ともいう。(中略)動物は見た目が10割なのである」
3P
動物行動学とは、「動物はどういう行動をするのか」「その行動にはどんな意味があるのか」「そのとき、その動物の中ではどんなことが起こっているのか」といったことを観察し、研究する学問だ。
(中略)
動物行動学の目を通した動物は、決して世間で思われている通りの姿をしていない。第一、動物の行動はそんなに単純ではない。
5P
私が願うのは、事実に基づく、ニュートラルな動物への見方といったものだ。
52-53P 「美しい」の生物学的意味とは?
(オオフクチョウなどの鳥の)ド派手な色や形の多くは、メスの気を引くためにある。多くの動物で、オスはメスの気を引き、繁殖のチャンスを得るために必死となる。美しい色合いは、メスに対して自分の優秀さをアピールする武器となる。
79P 実は清潔とも言えない蝶
蝶の餌は花蜜だが、ミネラルも必要だし、種類によってはアミノ酸の豊富な餌も利用する、動物の尿や糞、そして死骸だ。花蜜を吸うのと同じく、吻を伸ばして、表面から栄養を摂取している。このような糞食性、屍食性の蝶は何種もいて、彼らはタンパク質が分解して発する臭いにもよってくる。その成分の中には乳酸などの老廃物も含まれるので、真夏の、汗だくになった人間の体は蝶によって「おいしそう」なのである。
181P アフリカで一番にヤバいのはカバ
野生の王国、アフリカで一番ヤバい動物はライオンでもゾウでもなく、カバだというのは既によく知られた話であろう。カバはああ見えて縄張り意識が非常に強いし、子どもを連れた母親はもっと危険だ。特に、夜間に上陸して草を食べたカバが川に戻ろうとしている時が危ない。
284-285P 「おわりに」から
そう、人間はしばしば、自分自身の行動原理を動物に投影し、勝手に動物像を作り上げ、その虚像にああだこうだと言っているわけである。
(中略)
生物学に則った理解も、世界の見方の一つだ。
動物の目から見た時に世界はどんなものか、という視点を持っているのは、悪いことではない。
例えば、野生動物を観察している時、例えばカラスがゴミ袋をつつきたがっている時、あるいは、鳥がさえずっているのを眺めている時。
人間の常識から踏み出して、動物たち自身の視線に合わせて世界を見ようとする時、生物学的な解釈は極めて正しい方法である。
動物がやることを人間がやる行動や気持ちにあてはめて解釈していました。
また人間側で勝手に作り上げた先入観で動物を判断するのではなく、一旦彼らの立場に立って中立的に考えてみるような視点が必要だとわかりました。
人間も動物の一種ですが。
人とのつきあい方では、自分の思いだけで相手の方を判断するのではなく、相手側の立場に立って考えてみることが大切なのだと気づかされました。
<目次>
はじめに
1 見た目の誤解(「かわいい」と「怖い」―カモメはカラスと同じ、ゴミ漁りの常習犯、「美しい」と「醜い」―ハゲタカはハゲだから清潔に生きられるのだ、「きれい」と「汚い」―チョウは花だけじゃなく糞にもとまる)
2 性格の誤解(「賢い」と「頭が悪い」―鏡像認知できるハトとできないカラス、賢いのはどっち?、「やさしい」と「ずるい」―カッコウの托卵は信じられないほどリスキー、「怠けもの」と「働きもの」―ナマケモノは背中でせっせとコケを育てている、「強い」と「弱い」―コウモリの飛行能力は戦闘機並みに高い)
3 生き方の誤解(「群れる」と「孤独」―一匹狼は孤独を好んでいるわけじゃない、「亭主関白」と「恐妻家」―ライオンのオスはトロフィー・ハズバンド、「子煩悩」と「放任主義」―カラスの夫婦だって子育てに苦労する)
おわりに
1969年奈良県生まれ。。京都大学理学部卒業、京都大学大学院理学研究科博士課程修了。東京大学総合研究博物館・特任准教授。研究テーマはカラスの行動と進化。専門は動物行動学。著書に「カラスの教科書」「鳥マニアックス」など。
【No.608】カラスはずる賢い、ハトは頭が悪い、サメは狂暴、イルカは温厚って、本当か?松原 始 山と渓谷社(2020/07)
