ともに八十歳を越えた老夫婦と二人の娘、そして娘たちの家族の姿を描きながら、家族がどのようになくなっていくかを静かに描かれている。
途中に印象に残った箇所。
193p
「音楽はね、記憶なの。聴いたことのない曲はこの先の記憶になり、どこかで聴いたことのある曲からは記憶を引っ張り出せる。数限りない感情の中から記憶ごと浮かび上がってきたところでメロディをかぶせてかぶせて更に畳み掛ければ、人間ってのは嫌でも泣くように出来てるのさ」
夫婦は、以前は他人だった。
他人同士がいっしょに暮らすのは、今までの環境や生活習慣が違っているから、お互いに譲り合って合わせていくものだ。
他人同士の二人が出逢って夫婦となり家族となる。
そして、いつか子どもが生まれて親となる。
どこまでも親にとっては、子どもはそのままで。
でも気持ちが現実についていかないといけない。
子どもと親は成人するまで、家族としていっしょに思い出をつくる。
子どもが巣立っていくと、また二人の家族になる。
いずれ一人に……。
世の中にはいろいろな家族の形があるから、どれが正解とはいえない。
「家族じまい」のこの「しまう」は、物事を終わりにする「終う」ではなく、畳んだり片付けたりする「仕舞う」、家族を改めて振り返ることだと思った。
家族を振り返り現在の自分を見つめ自分の生き方を考えることだ。
ぼくにとって。心が寄り添えてできるだけ頼り頼られるような幸せな家族のままでいたい。
<目次>
1 智代
2 陽紅
3 乃理
4 紀和
5 登美子
1965年北海道生まれ。2002年「雪虫」で「オール讀物」新人賞を受賞。07年に同作を収録した単行本『氷平線』を刊行。13年『ラブレス』で島清恋愛文学賞を受賞。同年、『ホテルローヤル』で第149回直木賞を受賞し、ベストセラーとなる。他の著書に『起終点駅 ターミナル』『無垢の領域』『蛇行する月』『裸の華』『緋の河』など。
