普通の場所から見える月。という意味なのか。
一般的にどこにでもいるような日常に埋もれそうな50代の男女。
中学の同級生で病院の売店で再会した2人。
お互いに距離感を縮めることに戸惑いいつつも、次第にかけがえのない存在になっていく過程。
これがほんと絶妙だった。
普通にありえるだろうな。
二人は出会わない方が良かったのかどうかは何とも言えない。
気持ちは奥深く根ざして、伸びるべき場所はもうなくなって宙に浮いている。
そんな中途半端なことすべてで生きていくということで、若い頃は分からなかったその中途半端感が、折り合えないとしても大切なのだと今の歳になってやっとわかってきた。
余命幾ばくもない男女の悲恋をうたう例が多いのだけれども、このように普通の人間を主人公にすえて、丁寧に心象風景を描いていく作品がいまごろには貴重だと思った。
<目次>
一「夢みたいなことをね。ちょっと」
二「ちょうどよくしあわせなんだ」
三「話しておきたい相手として、青砥はもってこいだ」
四「青砥はさ、なんでわたしを『おまえ』って言うの?」
五「痛恨だなぁ」
六「日本一気の毒なヤツを見るような目で見るなよ」
七「それ言っちゃあかんやつ」
八「青砥、意外としつこいな」
九「合わせる顔がないんだよ」
1960年北海道生まれ。2003年「コマドリさんのこと」で北海道新聞文学賞、2004年「肝、焼ける」で小説現代新人賞を受賞。2009年『田村はまだか』で吉川英治文学新人賞を受賞
