先の大戦のさなか、生まれ故郷の津軽を三週間旅した記録。
太宰治が36歳、敗戦前年の昭和19年。
戦争中とは思えないような穏やかな内容の旅行記。
戦争があったのは都市部だけで田舎ではいつもながらの生活が続いていたという印象が持たれる。
第五の「西海岸」は、他に比べて文章が生き生きしていた。
幼少時の子守りで育ての親だった「越野たけ」との再会は、津軽の思い出と言えばたけだというほどに太宰にとって彼女の存在が彼の根本の部分にあるものなのか。
総じて津軽で太宰と関わった人たちとの愛を追及した旅の象徴ではなかったか。
津軽での優しさと繊細さで溢れた太宰は、他の作品と比べると珍しいものであった。
