【No.506】対岸の家事 朱野帰子 講談社(2018/08) | 朝活読書愛好家 シモマッキ―の読書感想文的なブログ~Dialogue~

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読書とは――著者や主人公、偉人、歴史、そして自分自身との、非日常の中で交わす対話。
出会えた著者を応援し、
本の楽しさ・面白さ・大切さを伝えていきたい。
一冊とのご縁が、人生を照らす光になる。
そんな奇跡を信じて、ページをめくり続けています。

人は一人だけでは生きていないし、独りだけでは生きていけないもの。

誰かに頼っているし頼られているもの。

だから頼れるような人がいれば頼ればよいものかと。

現実の世界では簡単でないけれども小説のなかだけでも上手に生きてほしいと思う。

 

家族のために家事をすることを選んだ専業主婦、村上詩穂。

二児を抱えて自分が風邪をひいても休めない多忙なワーキングマザーの長野礼子。

小児科医の夫との間に子どもができず姑や患者たちにプレッシャーをかけられる蔦村晶子。

外資系企業で働く妻の代わりに1歳の娘のために2年間の育休をとった国交省のエリート、中谷達也。

仕事に邁進する40歳の娘をいまだに面倒を見てしまう、夫に先立たれて一人暮らしの坂上さん。

終わりのない家事と闘う戦士たちをめぐるおはなし。

 

完璧にはできないから、たまには手を抜いたって、お金で解決できるならそうしてもいいし、休んだっていいんじゃないかと。

誰にも頼れずに限界を迎えている彼らたち。

自分も大変なのに、村上詩穂は優しく手を差し伸べて寄り添う姿がいじらしい。

こんなお節介焼きの人は、生きづらいこの世の中だからこそ必要なんだと思う。

 

162P

母と空を見上げた記憶など、中谷にはないのに。

ふと、父親であることを忘れた。官僚であることも忘れた。受験戦争を勝ち抜いてきたということも忘れた。蹴落とすと決めた同僚のリストも忘れた。

青い空を眺めてぼんやりする。飛行機雲をただ、きれいだね、と言い合う。

何の役にも立たない時間だ。でも、いつか堪え難いほどつらいことがあった時、前に進むために人が思い出すのは、こういう、ゆっくりと流れる時間なのかもしれない。

 

いつも車に乗ってそんな行動をしていると、見えているようでじつは周りをよく見えていない。

歩くようなスピードで周りの景色をじっくりと眺めていければ。

例えば、散り椿を見て冬だなと感じることができる季節感を持ちたい。

ぼんやりすることやゆっくりとすることは大切だ。

何も役に立たない時間が実は役に立っていることを。

このごろよくわかるよ。

 

プロローグ

第一話 専業主婦が絶滅危惧種になった日

第二話 苦手なパパ

第三話 時流に乗ってどこまでも

第四話 囚われのお姫様

第五話 明るい家族計画

第六話 家のことは私に任せて

第七話 大きな風

エピローグ

 

1979年生まれ。2009年『マタタビ潔子の猫魂』(MF文庫ダ・ヴィンチ)で第4回ダ・ヴィンチ文学賞を受賞しデビュー

他の著書に「わたし、定時で帰ります。」「駅物語」など。