携帯のメールでもなく、SNSやライン、メッセンジャーでもなく電話でもなく。
手紙は、アナログ中のアナログというくらい古典的な情報の伝達手段。
この手紙は、書いた後で何度も読み返すことができるし、
書く前に熟考することができ何回も内容を推敲する気持ちになることがわかります。
それに、手紙を受け取った人も何度も何度も読み返すことができて,
伝えたい手紙の意味を感じ取ることができます。
こういう行間を楽しむ書簡形式の小説もなかなか楽しい。
京都の大学から能登の辺境の実験所に飛ばされた!?大学院生の守田一郎は、友達や先輩や妹、元教え子、作家の森見登美彦氏にまでも次から次へと手紙を書きまくります。
彼から一方通行で送った手紙でも、ちゃんと時系列の物語となっているところは上手く仕上げています。
文通の武者修行を経ながら守田君は文章の技術を向上させていき、相手への手紙の習作を積み重ねていきます。
なにかしら愉しく笑える箇所が多いのだけれども、伊吹夏子さんへの失敗の書簡集などを読んでいると、誰か自分が好きな人に手紙を送りたくなるように切なく甘酸っぱい淡い気持ちになりました。
最後に守田君がやっと手紙を書いたのだから、伊吹さんからの返事もあったらよかったな。
ぜひ読みたかった。
それがちょっとだけ心残りだ。
<目次>
外堀を埋める友へ 7
私史上最高厄介なお姉様へ 37
見どころのある少年へ 61
偏屈作家・森見登美彦先生へ 87
女性のおっぱいに目のない友へ 119
私史上最高厄介なお姉様へ 続 143
恋文反面教師・森見登美彦先生へ 167
我が心やさしき妹へ 199
伊吹夏子さんへ失敗書簡集 227
見どころのある少年へ 続 255
大文字山への招待状 277
伊吹夏子さんへの手紙 303
1979年、奈良県生まれ。京都大学農学部卒、同大学院農学研究科修士課程修了。2003年『太陽の塔』で日本ファンタジーノベル大賞を受賞しデビュー。2007年『夜は短し歩けよ乙女』で山本周五郎賞受賞
