人生最後の7日間を死神によって調査され、人の死が決められる。
一回ではなく、終わったあとにもう一度全部読み返すほどに、死神を通してそれぞれの死について考えさせられる。
「たとえばさ、太陽が空にあるのは当たり前のことで、特別なものではないよね。でも、太陽は大事でしょ。死ぬことも同じじゃないかって思うんだよね。特別じゃないけど、まわりの人にとっては、悲しいし、大事なことなんだ」
死は、人間に平等に訪れて決して避けられない。
生と死は隣りあわせ。
花火のように、太く短く印象に残る人生もあり。
悔いのない人生を過ごしていきたい。
自分の一生がこれでよかったのかどうか、幸せかそうでないかは、死ぬときにわかるものなのだなと。
千葉は、雨男、ミュージック好き、クールで人ではないが人間味あり。
「死神の精度」の藤木一恵や「恋愛で死神」の古川朝美のお話がここでにつながったところが好き。
老女が千葉と出会ったとき死神だ認識し、いつも雨なのに最後に突き抜けるような青空が広がった「死神対老女」をぼくは気に入った。
印象に残った言葉
「誤りと嘘に大した違いはない。微妙な嘘はほとんど誤りに近い」
<目次>
死神の精度 7
死神と藤田 41
吹雪に死神 79
恋愛で死神 125
旅路を死神 169
死神対老女 233
1971年、千葉県生まれ。東北大学法学部卒業。2000年、『オーデュポンの祈り』で第5回新潮ミステリー倶楽部賞を受賞し、作家デビュー。2003年、『重力ピエロ』が直木賞候補となる。2004年、『アヒルと鴨のコインロッカー』で第25回吉川英治文学新人賞、本書収録の『死神の精度』で第57回日本推理作家協会賞短編部門を受賞。若い世代を中心に今もっとも熱い支持をあつめる作家。
272-273P
驚きのあまり言葉を失っている私を連れて、老女は海岸までやってきた。降り続いた雨のため、砂浜は湿っていたが、むかるみさほどなくて歩きやすい。私は海を前にして沖を望み、感嘆を洩らす。「青い」私は真上を見る。濁りのない青色が一面に広がっている。雲の欠片もなく、延々と空だ。「広いな」
老女は、私の横に立って笑いを噛み殺していた。「突き抜けるような青い空ってのはいい表現だよね」と腕を組む。「誰が最初に言ったんだろ」
「じっと眺めてると、こっちが溶け込んでいきそうだ」私は広漠たる青にうっとりしてしまう。深くも浅くも見える。際限なく広がるこの青空と、目の前で揺らぐ海が混ぜこぜになり、自分自身を飲み込んでくるような迫力を感じた。遠近感がない。
「綺麗でしょ」
私は立ち尽くして、空を受け止めるように目を瞑る。
