同じ日の同じ時間に二つの殺人と二つの自殺が起こっている。
その他に盗撮や強姦未遂の事件も同時刻に起こっている。
それには深い理由があった。
「マインドコントロール?」
今野敏さんらしく、畳みかけるような展開が続く。
のちに、これらの事件が解決にむかうのだが……。
これも知力を駆使してなかなか考えられた今野さんのサスペンスだ!
◎1955年、北海道三笠市生まれ。78年「怪物が街にやってくる」で問題小説新人賞を受賞しデビュー。以後旺盛な創作活動を続け、執筆範囲は警察・サスペンス・アクション・伝奇・SF小説など幅広い。2006年『隠蔽捜査』で吉川英治文学新人賞、08年には『果断 隠蔽捜査2』で山本周五郎賞と日本推理作家協会賞をダブル受賞した。空手の源流を追求する、「空手道今野塾」を主宰
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「あなたは、誰でも変態の要素を持っていると言われた。そのことについては、何となく理解できますよ。つまり、性的な衝動は誰でも持っている。それを理性でコントロールしている間は、変態と呼ばれない……。こういうことですね?」
「そうです。妄想の内容は、どんな人でも大差ありません。その妄想や衝動が理性を上回ってしまったときに、人は変態とか変質者とか呼ばれることになるのです」
196P
「再三話題になっているように、どんな暗示も、生存本能をもとにした忌避には勝てません。本人がどうしても嫌だと感じていることを、暗示によって無理やり実行させる、などということは不可能なんです。しかし、暗示によって、自分自身でも気づかずにいる欲求を、顕在化させることは出来ると思うのです」
「欲求を顕在化……。つまり、それは、理性によって抑えられている欲求を解放させることですか?」
「そういうことだと思います。自分の欲求に気づかないというのは、常識とか社会理念といったものによって、そういう考えを持ってはいけない、持つべきでないという意識が働いているからです。それはつまり、理性で欲求を抑えていると言い換えることもできるでしょう」
「持ってはいけない欲求……。持つべきではない欲求……。例えば、強姦とか盗撮の願望は、それに当たりますね?」
「そうです」