この物語が進行していくためには、これらのルールを守らないといけない。
喫茶店「フニクリフニクラ」には、非常にめんどくさいルールがいくつもあります。
一、過去に戻っても、この喫茶店を訪れた事のない者には会う事ができない
二、過去に戻ってどんな努力をしても、現実は変わらない
三、過去に戻れる席には先客がいる 席に戻れるのは、その先客が席を立った時だけ
四、過去に戻っても、席を立って移動する事はできない
五、過去に戻れるのは、コーヒーカップに注いでから、そのコーヒーが冷めてしまうまでの間だけ
六、過去に戻れるのは、1回限り
実は、ほかにも「未来」にも行くことができます。
たとえ過去に戻っても、現実を変えることはできないし未来を変えることはできない。
そうであっても過去に戻りたい人がいるのだから……。面白い。
ぼくならば、過去に戻って誰に会いたいだろうか。
誰に会いたいかな。未来ならば……。
この四話は、舞台の演劇みたいな感じがします。
喫茶店の雰囲気や登場人物の様子などが、映像を見ているように頭に浮かんできます。
この著者さんのプロフィールには、「脚本家兼演出家」と書かれてあったからなるほどなと。
現実は、過去に戻ることなんてできるわけはありません。
常日頃から後悔しないように、ご縁のあった人たちと大切につき合っていきたい。
たとえつらい現実を変えられなくても、自分の心は柔軟に変えて生きていける人でありたい。
<目次>
プロローグ 1
第一話「恋人」 結婚を考えていた彼氏と別れた女の話 7
第二話「夫婦」 記憶が消えていく男と看護師の話 91
第三話「姉妹」 家出した姉とよく食べる妹の話 177
第四話「親子」 この喫茶店で働く妊婦の話 267
◎大阪府茨木市出身。1971年生まれ。元・劇団音速かたつむり脚本家兼演出家。舞台、1110プロヂュース公演「コーヒーが冷めないうちに」で、第10回杉並演劇祭大賞を受賞。同作で小説デビュー
347-348P
結局、過去や未来に行っても、何ひとつ現実は変わらないわけだから、この椅子に意味などないのでは?と都市伝説を扱う雑誌には書かれていたが、
(心ひとつで、人間はどんなつらい現実も乗り越えていけるのだから、現実は変わらなくとも、人の心が変わるのなら、この椅子にもきっと大事な意味がある……)
と、数は信じて今日も言う。
「コーヒーが冷めないうちに」
涼しい顔はそのままに……。
