ピカソ、マティス、ルソー、ポロック、ワイエス……。
東日本大震災の福島第一原発事故やニューヨークの9.11テロなどで、傷ついた登場人物の心が癒されていく過程には「MoMA」の絵がありました。
原田マハさんは、ニューヨーク近代美術館MoMAがとってもお似合いです。
キュレーターとしての経験を踏まえて絵画に対する考察や愛情が見て取れますね。
あの「楽園のカンヴァス」の登場人物である「ティム」や「トム」がこの中に出てきたのは嬉しかったな。
出てきた絵を画像検索するなどして、頭に浮かべながら読み進めていくと臨場感があって面白いのではないかと思います。
ラストの「あえてよかった」は、原田さん自身のMoMAでの体験なのでしょうか。
異国の地でのこころの交わりに胸が打たれました。
この原田さんらしいお話を読んでいると、ぜひ近くの美術館に行きたくなりますね。
<目次>
中断された展覧会の記憶 5
ロックフェラー・ギャラリーの幽霊 55
私の好きなマシン 101
新しい出口 139
あえてよかった 173
◎1962年東京都小平市生まれ。山陽女子高等学校、関西学院大学文学部日本文学科、早稲田大学第二文学部美術史学専修卒業。伊藤忠商事、森美術館設立準備室、ニューヨーク近代美術館に勤務後、2002年にフリーのキュレーターとして独立。2003年にカルチャーライターとして執筆活動を開始。2005年『カフーを待ちわびて』で第1回日本ラブストーリー大賞を受賞、2012年『楽園のカンヴァス』で第25回山本周五郎賞受賞
90P
そうだとも。目も、毛穴も、心の闇も、全部開いて、見るがいい。
あなたこそが「目撃者」。新しい時代の、美の目撃者なのだから。
この絵が醜いって?ああ、確かに。この女たちは、人間のかたちをかろうじてしているけれど、人間じゃない。
彼女たちが体現しているのは、人間の心の奥底に潜む闇だ。真実だ。
ピカソ以前の芸術家だちが、決して目を向けようとはしなかった。人間の本質だ。
人間は汚い。ずるい。醜い。だからこそ、「美」を求める。
醜さを超えたところにあるほんものの「美」を求めて、アーティストはのたうち回って苦しんでいるんだ。
心地よい風景、光、風、花々、まばゆいほどに美しい女たち。けれど、美しいものを美しく描いて、だから、なんだっていうんだ?
アーティストは、美しいものを美しくカンヴァスの上に再現するために存在しているのか?
